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>>1 > 恐怖に耐えかねたのか、女の子の一人がニヤ先輩の着信に出てしまいました。 呼びかけに応えるというのは、その存在を受け入れたという証です。 『…キ…タナ!』 途端、怨嗟の籠った複数の男女と思われる不気味な声が、 私達のすぐ傍から聞こえてきました。 彼女が…自らが生み出したまぼろしを現実と認めてしまったから… 現実に固定化されてしまったみたいです。 声だけではなく、他の現象も何の因果も持たない私達に降りかかってきます。 この恐怖はもう無差別に人へ伝染してくるのです。 耐性の無いユッコ達は絶叫を迸らせ脱兎のごとく踏切から逃げだしました。 ここから一歩でも遠ざかろうと自殺個体のレミングみたいに… 水田の中だろうと、山があろうと、川があろうと、炎の中だろうと… 動けなくなるまでどこまでも走り続けるのです。 「ユズキ、ユッコをお願い!」 「すぺしゃるろーりんぐさんだー!」 一陣の風と化し、ユッコの前に回り込んだユズキが、 0.1秒の一瞬に左手のみで5発を放つ?という伝説のパンチを入れなかったら、 あの子達と同じことになっていたと思います。 お腹を押さえてその場に崩れ落ちるユッコ… 慌てて駆けつけたアマネと一緒に彼女を介抱していると、 背後に妙な気配を感じました。 誰かいます。 ゾクゾクと背筋を走る恐怖…背中に突き付けられた何者かの視線… 振り返りました。 青白い月光が降り注ぐ踏切の中に、 セーラー服を身に着けた女の子が立っていました。 ふわっとしたエアリー感のあるショートヘアに白いリボンタイ、プリーツスカートの裾を、 青い田の上を渡ってきた涼風が揺らしています。 俯いた顔の半分が前髪で隠れていますが… もしかして、あなたがニヤ先輩ですか? 女の子は引き結ばれた唇の端を吊り上げました。 むか…(-_-メ) 「ユズキ、あれ貸してください」 「Yes、ma’am!」 敬礼したあと、ユズキがおもむろにデイバッグからキン●ョールの缶を取り出すと私に差し出します。 (これでいいんでしたっけ?) 頭の上にたくさんの『?』を浮かばせながらも受け取ると、 私は踏切内へ入って缶が冷たくなるまで女の子に吹きかけました。 周囲に広がるあの独特の香り… でも、なんか違うような… でも、なんか効果があったみたいで… 降り注ぐ月光の中で女の子はゆっくりと形をなくし、淡く薄れて消えてしまいました。 長い溜息… でも。立ちこめる濃厚なキンチ●ールの匂いで余韻台無しです。 一部始終を見守っていたアマネがぷっと吹き出しました。 ユッコはお腹を押さえて蹲ってますが、肩が小刻みに震えています。 「お美事です、三佐殿!!」 きらきらと目を輝かせ、ユズキは見事な敬礼をしました。 誰が三佐ですか… 消えた五人を見つけだすことは適わず、 一度ユッコの家へ戻って大人の協力を仰ぐことにしました。 急いで見つけないと取り返しのつかないことになります。 地元の有力者であるユッコのご両親に事情を説明すると、 深夜にも関わらず、消防団に呼集をかけて彼等を探してもらうことになりました。 姿を消した5人は地元でも有名な子達らしいです。 そこへ地元の父兄会や青年団も捜索に加わりました。 朝方になって事情を知ったユッコの友人達が押しかけて捜査範囲が一気に広がります。 結果、朝日が高くなる前に全員が大小の怪我はありましたが、 命に別状の無い状態で発見されました。 まるで今まで悪夢の中にいたようです。 ユッコの中学の友人5人は全員、踏切へ向かうところからの記憶を失くしてました。 動けなくなるまで走り続ける程の恐怖を植え付けられたのだから仕方ないかもしれません。 後に、私達はユッコから二学年上のニヤ先輩にまつわる話を聞きました。 彼女の死は事故だったのか自殺だったのかは結局わからなかったと… (おわり)
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