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>>2 > 変態です。死者の胸部にそれほどまでの興味をそそられるなど変態の極みです。 他者よりも一秒でも早く、一秒でも長く幽霊の巨乳を我が目に焼き付けんが為に。 いざ征け、つわもの、日本男児!決戦の場は目の前ぞ。 砂煙を巻き上げて去っていく後ろ姿… 彼等に対する私の好感度は最低にまで落ち込みました。 「すげえ、手摺りに乗せてんぞ…」 「でかい…なんてもんじゃ…ない…」 「ななな、なんたる!なんたる!!」 「大きい…すごく大きい」 「あのおっぱいこそ、歴史を変える…」 「巨乳が肉眼で見えるぞ!もういい、照射!!」 「あは、大きい! 彗星かなぁ、違う、違うなぁ… 彗星ならバアーッって動くもんなぁ…暑っ苦しいなぁここ。」 私と奥さんが追いついた時、男性達は鑑賞モードに入って、 『ニ●ニ●動画』みたいに激しく言葉の弾幕を張りまくってました。 きらきらと目を輝かせて建物の一点を、5階の角部屋を凝視しています。 5対の熱視線を受け、手摺りに手を掛け、地上を見つめる女性の姿… 両手の間に巨大な球体が二つ…陰影深く、前に向かって大きく飛び出しています。 青い衣類…もしくは下着でしょうか、 胸の形がはっきりと分かるものを身に着けているみたいです。 圧倒的…ひたすら圧倒的な威容が、男子の視線を釘付けにしてました。 予測をはるかに上回り、芽生えた嫉妬、粉々になった矜持… 私は巨大過ぎるアレと自分の胸と交互に見比べてしまいます。 女子高時代から男女問わずに大きい大きいと持て囃され、 ただ重くて邪魔なだけと韜晦し、人の視線が集まるのを恐れて水着になることを厭い、 混雑する電車やバスに乗れば痴漢に遭い、それを語れば自慢かよと嫌味を言われ、 身体の線が出ない服を好んで身に着け、目立たぬ様に隠す様に毎日を送り、 憧憬と侮蔑、羨望と嫌悪の視線に当てられてきた私の半生… 5階のベランダから堂々と胸を晒すような輩に、 同病相憐れむという感情が浮かぶことなど一切ありません! 「あれは胸じゃないわ、 骨格と照らし合わせてみても…あれが人間の胸であるはずがないわ」 静かに見上げていた奥さんが凛とした声で偽乳と断言しました。 最初は信じられませんでしたが、 よく見れば確かに肩幅と胸の位置にかなりのズレがあります。 まるで作画崩壊したアニメみたいに。 店長さん達はまだ信じられないらしく呆然と女性を見つめています。 「わからん…俺には本物としか…」 「あなた達は信じたがっているのよ、 アレが本物であって欲しいという願望が目を曇らせているんだわ」 その時でした、 女性が大きくベランダから身を乗り出したかと思うと、 左側の胸が手摺を離れ… まるで一秒が引き延ばされたみたいにゆっくりと降下を開始したのです。 黒い尾を曳いて… ドン、と近くで重く硬いものが落ちた音がしました。 常緑の植え込みが風に揺れているのが見えます。 その手前、枯れた芝生の上に何か落ちてました。 青い帽子?白い球体には目鼻があり、 動物プリントのついた可愛い服…小さな胴体と手足… 「あれは巨乳なんかじゃない!赤ん坊だ!」 「両手に抱えて…また落とす気だ!」 仰向けで倒れる赤ちゃんはぴくりとも動きません。 そこへ、私の視界を妨げる大きなものが降ってきました。 たて続けに二回、地面へ激突する重い音。 V字状に空へ向けて立つ両脚、肩から落下して…頭から地面に刺さっている様に見えます。 胸まで捲れた青いワンピースの裾…下腹に走る帝王切開の赤い傷跡… 白い足が、ガクガクと大きく震えていました。 頭部が真横を向いてしまっています。 足に力が入らず、腰を抜かして私はその場へ座り込んでしまいました。 私を見つめる眼(まなこ)、 引き結ばれた唇の端が吊り上がって笑っているかの様です。 その脇に…うつ伏せで倒れる…もうひとりの赤ちゃん。 「今から四…五年前に心中事件があった。 双子の赤ん坊をベランダから投げ落とし…自分も飛び降りた。 しかし、母親は意識不明の重体ながらも…死んではいなかったはずだ…」 抑揚のない店長さんの声… ゆっくりと仰向けに倒れる女性…ぴくりとも動かない小さなふたつの身体… 言葉ひとつ出せず見つめる私… しばらくすると、母子の姿は地面に溶けて消えていくように見えなくなりました。 「あの女、また…ベランダにいるぞ!?」 天之津君の叫ぶ声が遠く感じます。 そして、また三度… さっきよりも鮮明になって聞こえる、 地面に激突して肉が拉げ、骨が砕かれる音… 「繰り返しているんだ… 落下し…あげる断末魔をずっと… 救われる日が来るまで何度も何度も…」 (おわり)
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