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>>8 > ファミレスのバイトが終わったのが23時だったから、おそらくその日アパートに帰ったのは23時半ごろだったと思う。 2階建てで家賃3万のボロアパートなんだけど、俺の部屋は階段から一番遠い場所にあった。まあ、良くいえば角部屋だけどね。 裏手は深い森になってて夜はめちゃくちゃ気持ち悪かった。 苔むした墓石なんかも見えるし、なにせ怖がりの俺は、帰りが遅くなる時は必ずといっていいほど雨戸と鍵をしっかりと閉めてから外出してた。 俺はそーっと鉄階段をのぼって、足音を立てないように細心の注意をはらって自分の部屋の前まで辿りついた。 なんでかっていうと、そのアパートの住人は土地柄のせいか変わった人が多かったんだ。 その中でもダントツに群を抜いてやばそうなのは、全身刺青で冬でも半袖の関西弁のおっさんなんだけど、悲しい事にそのおっさんは俺の隣りの部屋に住んでたんだ。 そっと鍵を回してドアを開けたら突然暗い部屋の奥から「パン!」って風船か何かの弾けるような音がした。 次の瞬間、上から下まで白い服の女が居間の方からこっちに向かってフワーーって近づいて来たんだ。 俺が「うわーーっ!!」って叫びながらドアを閉めると、ドタドタドタドタ!って部屋の中を走り回る音がした。 で、次の瞬間「バン!!」ってドアが開いたんだ。 でも、開いたのは俺の部屋じゃなくて、隣りのおっさんの部屋だった。 「夜中にうるさいんじゃワレ!!」 竹刀を持ったおっさんにもう少しで殴られそうになったんだけど、おっさんも俺の顔色をみて何かを察してくれたようで「なんかあったんか?」って聞いてきた。 「だ、誰かいました!!」って自分の部屋を指さしたら、おっさんは「ああん?!誰や!!」って凄みながら俺の部屋に入っていったんだ。 俺は内心「おっさんが一番うるせーよ!」って思ったんだけど、その時のおっさんは凄く頼もしく見えたな。 しばらくしておっさんが出てきて、「誰もおらんやないけクソガキ!ワレ嘘ついとったらしばきまわすどボケ!!」って、竹刀の尻の部分で頭を殴られた。 「すいません!」って謝りながら、おっさんの肩ごしから部屋の中見たら、閉めてるはずの雨戸が全開に開いていた。 おっさんは「誰もおらんけど、なんや廊下水浸しやったぞ。窓も開けっぱなしやし、ちゃんと戸締りぐらいしとけよ!」って、自分の部屋に入っていった。 部屋の電気を全部つけて、おそるおそる外を覗いてみたけど、森はシーンとしてて、ただひたすらに気持ち悪いだけだった。 おっさんの言う通り廊下はずぶ濡れで六畳の居間もずぶ濡れだった。それに畳には誰かが走り回ったような足跡があった。 おっさんの足跡かなって思ったんだけど、よく見るとそれは1人分の足跡じゃなくて子供くらいのサイズの足跡も混ざっていた。 もうこんな気持ち悪い部屋で寝たくなかったから、片っ端に今晩泊めてくれそうな友達に電話をかけまくった。 結果をいうと、全部断られた。 やむなくダメ元で元カノに電話をかけてみたら、元カノに「ねえ、なんで彼女いんのに私にかけてくんの?」って、意味不明な事を聞かれた。 どういう事だか聞いてみると「さっきからずっとあんたの声にまじってボソボソ何言ってるかわかんない女の声がするんだけど」って。 怖さの余り俺が「誰もいねえよ!怖えー事いってんじゃねーぞ!」って逆ギレしたら、壁をドン!って叩かれた。 幽霊も怖いけど隣りのおっさんはそれ以上に怖かったから、俺はその夜、バイト先のファミレスでアイスコーヒーを飲みながら朝を迎えたんだ。 その頃の俺は今と変わらずビンボーだったし、部屋を引っ越す訳にもいかなかったから、仕方なく友達から教わったやり方で盛り塩をして眠った。 盛り塩が効いたのかそれとも幽霊なんて初めからいなかったのか、それから一週間くらいはぐっすりと眠れた。 しかしその夜は違った。 夜中に猫の鳴き声みたいな音で目がさめて、怖いから目だけを動かして真っ暗な部屋の中を探っていたら、明らかにトイレの前に人が立っているようなシルエットが見えたんだ。 暗闇に目が慣れるにつれだんだんとそいつは髪が長くて、両手を前にダラんと垂らした女だという事がわかってきた。 ピチャン ピチャン… と、どこからか雫の垂れるような音も聞こえた。 俺は失禁寸前で「頼む!どこかに消えてくれ!」って、心の中で何度も繰り返したよ。
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