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>>2 > 「代々木○丁目の△△△ってマンションなんですけど、あそこの郵便受け、なーんかいっつもカタカタいってません?」 現地から会社に戻る車の中で、一度先輩に訊いてみた。 この先輩、仮に岩城さんとする。 40代50代のおじさまが多い職場で、岩城さんも例に洩れずそのくらいの歳のベテランだ。 当然、件のマンションにも何年も配達に行っている。 「あー、あっこな」 「しかも毎回違うとこが鳴ってるっぽいんですよね…」 ただの不思議な現象、くらいのつもりで話を振った私に、岩城さんは車のハンドルを切りながら言った。 「おっ、わかってるねー。ま、カタカタ煩いだけで、ポストんとこまでは降りて来ないから安心しな」 「は?」 ……おりてくる? 意味深な発言に、一瞬思考が止まる。 私は、怖い話は好きだが、誰かと一緒でないとホラーゲームもできないタイプの人間である。 身に降りかかりそうな心霊現象?は正直御免被りたい。 「どーいう原理か知らんけど、丁度その時居座ってる部屋のポストがカタカタいうんじゃねーかな」 岩城さん曰く、そのマンションにいる「モノ」は、建物内を巡回しているそうだ。 そいつがいる大体の距離や方向とその時鳴っているポストの番号を照らし合わせてみての大雑把な結論らしい。 勿論、オートロックで玄関から先に入れない以上、実際にそいつがいる部屋番号まで確かめることはできない。ただの憶測である。 1階、2階のポストは粗方揺れているのを見たことがあるが、干渉されそうな程近くにいると感じたことはないから多分大丈夫だと、岩城さんは豪快に笑った。 いや、多分ってなんだ。 「っていうか…、岩城さんって所謂『見える人』ってやつなんですか?」 少々不躾な質問だったが、配達員のおじさまにこのくらいのことを気にする人はいない。 「やー、俺にどーいうのが見えてて、お前やほかの奴らにどーいうのが見えてないかわからんから、なんとも言えんなあ」 そこで話はおしまいになった。会社に着いたからだ。 岩城さんの話が本当なのか冗談なのかは、結局わからないままである。 例のマンションには、当然その後何度も配達に行っている。 何かに出会したことも何か感じたこともまだないし、これからもないことを願っている。 ただ…やはりいつでも、鳴り続けているのだ。 集合ポストのどれかがひとつ、カタカタと。 (了)
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