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▼怖い名無し
ロビンM
あのうロビンMさん連投しすぎです。
ほかの作品がさがって読みにくいです。 勘弁して下さい。
スレを立てたんで今後はこのスレに心行くまで傑作を投稿して下さい。
11/12 10:15
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▼[53]ロビンえ
千手観音な男
今回は誰にでも起こりえるかも知れない身近な恐怖体験を話そう。呉々も美女は読まないでくれたまえ。
ある休日に腹が減ったので近所のラーメン屋へと行った。味は博多系豚骨、カウンター八席だけの屋台風で小汚い店だがまあまあお気に入りの店だ。
しかし昼のランチタイムから深夜三時まで開けっ放しの筈のシャッターが何故か降りている。
スマホを見ると昼の三時ジャスト。
暖簾は掛かっている。定休日でもないのにおかしいなと思い、小さな硝子窓から電気の消えた店内を覗くと一瞬で血の気が引いた。
なんと最近入ったオタ風の大学生アルバイト君がまさかの絶賛自慰真っ最中!!カウンターの丸椅子に寝っ転がって霰も無い姿でもがいているのだ。丸見えだ。彼は誰も見ていないと思っているのか、スマホ片手に右手を激しく乱舞させながら超ハッスルしている。眼鏡も曇っているようだ。丸見えだ。
俺は思考回路停止状態でその場に緊急固定。
道路を走る市バスのクラクションで我に返り、現場を写メで撮ってやろうとスマホをカメラモードに切り替え急いで向けた先には、暗闇の中で下半身裸のキモオタ青年がもの凄い形相で俺を睨みつけていた。
彼はヒラヒラと両手を上下しながら正に千手観音菩薩状態。いつでも攻撃が出来る戦闘態勢を取っているのは一目瞭然だった。
俺はまた思考回路停止状態で完全固定した。
奴は店の中で何かを叫んでいるようだが、無論声は聞こえてこない。
シャッターを開けて「貴様!店長の目ぇ盗んで勝手に店閉めて何やってんだ!糞ナニ豚汁野郎が!!」と言って拳骨をしてやりそうになったが、こいつと話す事も気持ち悪いし鳥肌もんな為、指さして中指を立てて大笑いした後、素早く写メを三枚撮り帰路に着いた。
食欲不信。
人間不信。
粗末な愚根の幻影。
俺はあの馬鹿のせいで三日間も悪夢に魘された。お陰で三キロも痩せ、もうあの店のラーメンは食わないと決めた。そして恐々と写メを拡大した龍が叫びながらその場に嘔吐しかけた。
「兄貴!あいつ被ってんじゃん…w」
後日、匿名でその店にクレームを入れたのは言うまでもない。この度は最後までお読み頂きありがとうございました…ひ…
【了】
06/06 10:20
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▼[54]ロビンM
憑依、麗子OF THE DEAD 続き
「うおおおおお!!!」
ガス!!ドス!!バシ!!
「はい次ぃ!!」
ガス!!ドス!!バシ!!
「ヒャッハー!!」
面白い様に攻撃が決まり俺がヒャッハーするのも無理は無い。幸いこいつらは最近流行りの走るゾンビとは違い、バタリアン時代の古いタイプのゾンビのようだ。
あーあー言いながらただユラユラと歩いて来るだけなので、弱いも何もスキだらけで糞ダセえ単細胞ゾンビだった。
ガス!!ドス!!バシ!!
「へいへいへい、カモンカモン!!お代わりプリーーズ!!(´▽`) '`,、'`,、」
ガス!!ドス!!バシ!!
奴らは心臓、もしくは頭、つまり脳味噌を破壊すれば動かなくなる。奴等に噛まれさえしなければ楽勝。でも噛まれたら大変、俺もゾンビになってしまう。でも動きがノロマなのでその心配は皆無。
それは「OF THA DEAD」シリーズを大体見尽くしている俺にとっては常識なのである。
「へへ、貴様ら俺を甘く見ていたようだな!この死に損ないが!全員次こそ間違い無く地獄に送ってやるぜ!ひひゃひゃひゃ(´▽`) '`,、'`,、」
ガス!!ドス!!バシ!!
警棒を振り下ろす度にグチャリと鈍い音がしてめり込み、脳髄と思しきドロドロの液体が飛んで来る。既に俺の体は奴らの返り血で真っ赤に染まっている事だろう。気持ち悪りぃがこの際仕方ない、全員眠らせてから考える事にしよう。
ふう、もう二十体ぐらいは殴り倒しただろうか?振り返ると奴等の動かなくなった夥しい数の死体が転がっている。
そして、漸く今目の前をユラユラと歩くゾンビは残り一体となった。その格好からして生前牧師をしていた老人だと見受けられた。
「へへ、余裕余裕♪♪」
牧師は他の奴等と違ってある種異様なオーラを纏い、ボソボソと何かを呟いていた。両の目玉は抜け落ち、左手は肩からゴッソリと千切れ無くなっている。
ピカ!ゴロゴロゴロゴロ!!ピシャン!バリバリバリバリ!!!
突然、空からの雷鳴が牧師の後ろに聳え立つ巨木に降り注いだ。
バキバキと真っ二つに裂ける巨木。
それを待っていたかの様に牧師は右手を天高く突き上げ、大声で何かを叫んだ。
『〆$○+%・€#<°!!!』
ゴロゴロゴロゴロ…
また夜空が鈍い光と共に唸りだした。どうやらやはりこいつが最後のラスボスの様だ。
『〆$○+%・€#<°!!!』
ピカピカ!!ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!ピカピカ!!
【続く】
06/07 03:35
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▼[55]ロビンM
「…………」
雷鳴が鳴り止み、牧師は右手を挙げたまま微動だにしない。
何も起きなかった。
「へ、この見掛け倒し野郎が!(´▽`) '`,、'`,、」
少し恐怖をおぼえてしまった自分が恥ずかしくなった俺は、この基地外牧師にトドメを刺すべく腰掛けていた石碑から立ち上がろうとした。
「……ぐはっ!!」
動けない…
見ると土の中から伸びた紫色の分厚い手が俺の両足首を掴んでいる。振り払おうにも物凄い力でビクともしない。
「は、離せこんちくしょう!!」
ガシ!!
「ふ、ふひょう!!( ´བ` ) 」
直で触るのはキモいので警棒でその手を殴ろうとしたが、誤って自分の爪先を殴ってしまった。痛すぎる。爪が剥がれたかもしれない。
「…うう…いてて…」
『〆$○+%・€#<°!!!』
痛みで項垂れる俺の髪の毛をガシリと何者かに掴まれた。強引に顔をグイと引き上げられる。
目の前には顔面血だらけの歯を剥いた牧師のドアップ。
『 ユー達はとんでもない事をしでかしてしまった…ミー達のボスである「アヤトラ・サディク・ジュンダラー・サセコビッチ」の墓に小便をかけてしまったのだ…決してサセコビッチ様はユー達は許さないだろう…許さない…サセコビッチは許さない…もう一度言う、サセコビッチは許さない…』
「サセコビッチ…?」
先程まで理解不能だった牧師の言葉が突如、日本語で直接脳に流れ込んできた。妙な説得力のある牧師の言葉に俺の身体は震えが止まらない。
ゴロゴロゴロゴロ!!
またも雷鳴が。
『〆$○+%・€#<°!!!』
「や、やべ!」
牧師はまた変な呪文の様な叫びをあげた。俺を喰うつもりなのか大口を開けている。
『怒りと共にユー達が我らの封印を解いたのだ!死を持って償いたもう!サセコビッチ様へ死を持って償いたもう!ガアアアアア!!!』
「う、うわあああああ!!」
ゴロゴロゴロゴロ!!
「兄貴!!頭下げろー!!」
バコオオオオオン!!
背後からの龍の叫びが聞こえた瞬間、物凄い爆発音と共に目の前の牧師の頭が一瞬で無くなった。そして数秒後、頭を失った首からは水圧の弱いシャワーの様にジュクジュクと真っ赤な血が溢れ出して来た。
ドシャリ…
牧師の身体は痙攣しながらゆっくりと地に堕ちた。
振り返ると金属バットを手にした龍が震えながら立っていた。
「良かった兄貴!間に合った!」
龍は涙と鼻水をぐしゃぐしゃにした情けない顔でへなへなと膝を着いた。多分クラウンのトランクに忍ばせておいた金本サイン入りの金属バットを持って来たのだろう。
足元を見ると先程俺の脚を掴んでいた不気味な手も消えている。
「お、おう、サンキューな!ちょっとだけヤバかったぜ…へへ…」
「 兄貴、笑ってる場合じゃないすよ!は、早く逃げないと!」
「ふっ…情けない顔しやがって、ゾンビ共は全員俺がやっちまったから大丈夫だよ、そんなあせんなよ龍wわははは!」
「あ、兄貴!あれ!」
龍が指さす方を見ると、先程金属バットで吹っ飛ばされた牧師の生首がゴロゴロとこちらに向かって転がって来ていた。
そして俺達と目が合う角度でピタリと止まった牧師は、不敵な笑みを浮かべながらこう言った。
『ユー達はサセコビッチ様を甘く見ているようだな…一度復活されたサセコビッチ様を止める事はもう誰にも出来ない…その肉体が死のうと、また違う形で再生されるだろう…ユー達はサセコビッチ様から逃れる術は…ないのだ…フオッホッホッホッホッ!!ぐ、ぐはあああ!!』
そこまで言った所で牧師は動かなくなり、絶命した。
「…………」
さっきまであれ程明るかった街灯が雷の影響を受けたのかその光力を弱めボンヤリと墓場を照らし、風の音も無い完全な静寂と生温い空気が辺りを支配している。
「あ、兄貴…サセコビッチってなんすか?」
「俺に聞くなよ知るかバカ!」
イライラする。夢ならもう醒めてもいい頃だ。しかしリアル過ぎるこの現状。震えの止まらないこの両脚。牧師が死んだ今もまだ緩む事の無い緊張感。そして何か忘れている…
何か…
龍が俺の状態を察し肩を貸してくれた。墓場を見てももうゾンビの姿は見えない。やはりもう終わったのか?…
強烈な臭気が鼻を突いた。
足元の牧師の頭から水蒸気の様な煙があがっている。
「あ、兄貴あれ!」
見ると先程のゾンビ共も同様、酷いアンモニア臭を漂わせながらモクモクと煙を上げ溶け出していた。
ジュン…ジュワアアアア…アア…
そしてゾンビ共は跡形も無く消えた。
夜空を見上げると雨雲も消え去り、ここへ来た時と同じ満天の星空が瞬いている。綺麗だ。
「宇宙にいるみたい」
隣りで龍がボソリと気持ち悪い言葉を発した。でも何か忘れている気がする…
【続く】
06/07 03:38
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▼[56]ロビンM
何か…
返り血を浴びた上着を脱ぎ捨て、タンクトップ一枚になった俺は車に戻るのを躊躇った。あれ程麗子にボコボコにされた愛車クラウンを直視出来る自信が無かったのだ。んっ?
麗子…?
麗子…麗子…
麗子!!
その時、クラウンのボンネットの向こうで白い人影が動いた。完全にさっきまでの死闘で麗子の存在を忘れてしまっていた。
麗子はどうなったのか?豹変した理由があいつらであるとするならば、あいつらが死んだ事により麗子はあいつらの呪縛、憑依から解放されて元の自分を取り戻したのだろうか?
俺はクラウンの心配よりも麗子の心配の方が先だという事に気付き、龍を囮に使う事にした。
「り、龍…麗子…麗子の様子見て来い!俺はクラウンのエンジンかけて香織と待ってっから」
「ちょ、ちょっと何いってんすか兄貴!!無理ですよさっきの麗子さん兄貴も見たでしょ?完全にヤバイっすよあれ!兄貴が見て来て下さいよ!」
龍は金本サイン入りの金属バットを俺に押し付けると、ジェリー並みのスピードでクラウンへと乗り込んでしまった。
「あいつ足だけは速ええよな、ちぇっ!!」
先程の白い人影はまだその場を動かずに突っ立っている。背後の森の影の影響でボンヤリとしか確認は出来ないが多分麗子で間違いないだろう。
まあ、たとえ麗子があのままの状態で襲いかかって来たとしても勝てる自信はある。こいつで頭を吹き飛ばしてやるだけだ。
余裕だ。
俺はクラウンの後ろからボンネットの前に立っているであろう麗子に向かって叫んだ。
「おい麗子!お前は麗子なのか?!」
我ながらよく分からない質問を投げかけてしまった。しかしその人影はその声に反応する事も無く依然突っ立ったままで動く気配がない。
サセコビッチ…
突然、牧師の声が脳裏を掠めた。
サセコビッチ…サセコビッチ…サセコビッチ…サセコビッチ…
「おい、サセコ!!」
つい間違えて麗子を「サセコ」と呼んでしまった。その瞬間人影がゆらりと動いた。
そして…
『ブギャアアアアアアア!!!』
麗子はまるで猫の声を拡声機を通して聞いたかの様な物凄い音量の奇声を発し、またもやドン!とクラウンのボンネットに飛び乗ってしまった。
『ブギャア!!ブギャア!!ブギャアアアアアアアアアアア!!!』
サセコと呼ばれたのが勘に触ったのかは分からないが、麗子はメチャクチャに怒っている様だ。
ドン!ドン!と闇雲にボンネットを踏み鳴らしながら、終いには四つん這い状態になり両手両足でボンネットを叩き始めてしまった。
「くっ!クラウンが!俺のクラウンが!ち、畜生!!」
俺の中で何かが弾けた。
それは怒りが恐怖と痛みに打ち勝った瞬間でもあった。実は相手が香織の親友「麗子」だという事もあり、なるべく暴力では解決しない方向で考えていた。
*しかし相手が麗子の様で麗子ではない存在(多分サセコビッチ)
*龍と香織を安全に帰さねばならないという使命感の崩壊。
*そして何より俺の分身とも言える愛車クラウンへの許す事の出来ない酷い仕打ち。破壊。
以上、この三点が俺の当初の誓いを打ち破ってしまったのだからもう止められない。
「うりゃあああ!サセコビッチこの野郎!てめぇもう許さねえ!絶対許さねえ!脳みそブチまけて口から手ぇ突っ込んで背骨カランコロン♪いわしたろかボケえええ!!」
俺はバットを振り上げてボンネットに飛び乗り、躊躇する事無く麗子の脳天に渾身の一発を振り下ろした。
【続く】
06/07 03:39
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▼[57]怖い名無し
ロビンさん、こっちで書いてたんか、気がつかなかった。乙です。
最近、どうしてるのかと思ったわ
06/14 11:57
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▼[58]うざい
ロビンとその取り巻きがうざい。ま、友達居ないから、怖話で仲良くしているようだけど、読者には分からないようにしてほしい。
04/16 19:21
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▼[59]怖い名無し
ここで何もしていないのだから、別にうざくないんじゃないだろうか
04/17 00:33
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▼[60]怖い名無し
多分彼はあっけからんとした口調にうざさを感じたのだろう
俺は感じないけど
オカ板によく居る口調だし
04/17 05:37
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▼[61]怖い名無し
男性
もう今はこっちに寄りつかず、あっちで忙しいだろう?
04/17 16:19
[CA3K]
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▼[62]怖い名無し
あちらで活躍しているんだ、こちらでわざわざ嫌み言う必要ないだろうに。
ロビンさん頑張ってくれ。
皮は敵だから別な。
04/17 19:27
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▼[63]怖い名無し
こげさんも来てるな怖話^ ^
こないだリレー作とかやってた!クオリティやばいで
04/21 02:43
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▼[64]怖い名無し
マジか!?近いうちにここにも投稿するかな。
ちょっと見てくる
04/21 12:57
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▼[65]怖い名無し
すまん、教えてくれてありがとう
04/21 13:09
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▼[66]怖い名無し
やあロビンミッシェルだ。
久しぶりにこちらを覗いてみたんだが、あまり新作が増えていませんね。
因みにこげ姐さんは現在pc故障で傷心中の為、しばらく怖話もお休み中です…ひ…
05/06 19:54
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▼[67]おいしかったよ
やあロビンミッシェルだ。
今回は怖いというより少し不思議な話を。
これは今から五年前の話だが、親父が肺癌で亡くなり、その二カ月後に続けて親父の兄も胃癌でこの世を去った。
不幸は続くもので、その数週間後には親父の妹までもが持病が悪化して今現在、集中治療室に入っていて危篤なんだという内容の連絡が母親から入った。
俺はその頃、年中無休の中華料理店を新しくオープンしたばかりで毎日が忙しく、なかなか見舞いに行く時間が作れずにモヤモヤしていた。
昼休みに母親へ電話をすると、病状は決して良くはないが一応安定はしているので心配はいらないと言っていたが、幼い頃から可愛がって貰っていた叔母だけに心配でたまらなかった。
いても立ってもいられない俺は、叔母の一人娘である美希ちゃんに電話を入れて、現状を詳しく教えてくれと言った。
すると俺の予想通り、旦那のいない叔母さんは貯金はおろか、大した保険にも加入しておらず、今回の病院代だけでも全く金が回らないと美希ちゃんは電話口の向こうで涙を流していた。
俺はいつか返してくれとだけ約束して、纏まった金を美希ちゃんの口座に振り込んでやった。
勿論、返して貰うつもりは毛頭ないが、今の俺に出来る事はこれぐらいしかないと割り切り、夜の仕事にかかった。
午前三時を過ぎて客も引き出し、そろそろ片付けでも始めるかなと思った頃、チリンと入り口の自動ドアが開いて、かなりふくよかな女性が一人来店した。
叔母さんだった。
テーブル席でバイトが注文を取る姿を厨房から眺めながら、俺は懐かしい気分に浸っていた。
俺がまだ小さい頃、叔母は一緒に公園で遊んでくれたり、宝塚歌劇を見に連れて行ってくれたり、野球好きの俺の為に甲子園球場のネット裏の良い席を取ってくれて観戦させてくれたりもした。
その優しい笑顔も、体型も髪型もあの頃となんら変わっていなかった。
叔母はニコニコしながら俺が作った餡掛け炒飯を旨そうに平らげると、会計で涙を浮かべる俺に向かって「おいしかったよ」と言って「ありがとう、すまなかったね」とだけ言って店を出て行った。
俺はドアに向かって深々とお辞儀をした。
後ろでバイトが騒いでいるので見に行ったら、叔母が食べていた餡掛け炒飯が一口も手を付けられていない状態のままで残されていた。
叔母さんが俺を気にかけ、わざわざこんな遠い所まで会いに来てくれたんだと思ったら、胸が熱くなった。
午前五時、仕事が終わりスマホを開くと母親から『今朝方、お姐さんが病院で亡くなった』とメールが入っていた。
結局、この数ヶ月間で親父の兄弟が親父を含めて三人立て続けに亡くなった。こんな偶然てあるのだろうか?
妹の夏美は通夜の席で、棺の中の叔母の死に顔を見つめながら小さな声でブツブツと何かを言っていた。
外へタバコを吸いに出た時にそれとなく夏美に聞いてみると、叔母さんに「色々と迷惑かけてごめんね、ありがとう」って言われたんで「ううん、こっちこそ今までお世話になってゴメンなさい、またね」って返したらしい。
しかし、その後に「貴方達も3人兄妹なんだから、私たちの年齢に近づいたら気をつけなさい」と言われたんで「えっ、どうして?」って聞いたら、みるみる叔母さんの表情が険しくなって「それはお前達で考えろ!」って今までとは全く違う低い男性のような声で言われたそうだ。
「あれは絶対に叔母さんじゃなかった」と夏美は珍しく怯えていた。
では叔母さんの口を使って話していたのは一体誰なのか?今でも気になってしょうがない。
親父達が死んだのが五十代後半、もしかすると俺達兄妹の寿命もその辺りなのかも知れない。
【了】
05/06 20:01
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▼[68]怖い名無し
【彼の娘】
私は物心ついた頃から絵を描くのが大好きだった。
大学で油絵にハマり、それからというもの仕事の合間を見つけてはこうして景色の良い場所に腰を下ろして一日中絵を描いている。
キャンパスの大きさには然程こだわりはなく、30センチの小さな時もあれば、1メートルの時もある。
最近は専ら海を描く事が多い。
この高台から見渡す景色が絶景で、港と海と空のバランスがとにかく素晴らしいのだ。
だからと言って、別に個展を開きたい訳でも、売りたいと思っている訳でもない。あくまでも趣味の領域である。
時折、近くの居留地を訪れる観光客達などに絵を覗き込まれて話しかけられる事もあるが、そんな他愛のない会話も楽しみの一つだ。
『あなたももういい年齢なんだから、そろそろいい人見つけて結婚しなさい』
実家に置いてきた、母からの言葉を思い出す。
確かにもう私は若くない。
絵ばっかり描いてないで、職場仲間の合コンの誘いなんかも断らずに積極的に参加しないといけないのかもしれない。
「ほう、お上手ですね」
不意に声を掛けられ顔を上げると、爽やかな笑顔が印象的な、浅黒い肌の彼がいた。
「あ、ありがとう」
心地よく響く低い声と、清潔感のある彼に私は一瞬で心を奪われていた。
描きかけの私の絵を真剣な眼差しでみつめる彼に話を聞いてみると、彼も学生の頃から絵を描いているらしかった。
話の盛り上がった勢いのままに私たちはその後、喫茶店で一緒にランチを食べ、電話番号を交換した。
どうも、彼も私に一目惚れだったらしく、彼からの告白で私たちは付き合うようになった。
それ以来、休みの日は一緒に絵を描いたり、ハイキングしたり、彼の部屋で過ごしたりした。
ある時、彼が言った。
「真希は風景画しか描かないの?良かったら僕の絵を描いてくれないか?そうだ、お互いの絵を描こうよ。僕も今の真希が描いてみたいんだ」
私は首を横に振った。
別に人物画が描きたくない訳でも、苦手な訳でもない。他に理由があるのだ。
しかし、彼はその後も執拗にお互いの絵を描きたがった。
私は何度目かの彼の言葉で、渋々絵を描く事を承諾した。
彼は子供のような人懐っこい、私の大好きな顔で笑った。
翌週、彼の部屋で向かい合って座り、照れながらお互いの絵を描いた。
先に描き終えた私が彼の絵を覗こうとした時、彼は絵を隠しながら言った。
「折角だからこの絵を見るのは、結婚式までとっておこうよ」
彼はそう言うと、紫色の小箱から婚約指輪を取り出し、私の薬指にはめた。
「真希!次の君の誕生日に式を挙げよう!僕と結婚して下さい!」
彼が地面に膝をつき、頭を下げた。
「でも、あなたには」
彼のプロポーズに対して咄嗟に私の口からでたのは、日頃から彼に対していい出せなかった言葉だった。
「あなたには子供がいるじゃない」
彼は一瞬固まった。
「子供?えっ?真希?子供ってどういう事だい?」
私は自分の描いた絵を台から外し、彼に見せた。
「ほら、あなたには子供がいる。私は初めからあなたの足にしがみ付いてる女の子が視えてたの」
彼は私の絵を見た瞬間、叫んだ。
「アイカ!!」
彼は声を上げて泣いた。
そのそばで、アイカと呼ばれたその少女は悲しい顔で彼を見つめていた。
彼が落ち着いてきた頃に、私たちは場所を変えて、近くの喫茶店にいた。
アイカちゃんも、彼の隣りの席に座っている。
「実は、僕は一度結婚していた。隠していてごめん!アイカはその時の子だ」
大体予想していた範囲だった為、私は彼の告白にもさして驚かなかった。
「でも離婚した。彼女はアイカと俺を捨てて出ていったんだ。多分、男が出来たんだろう、思い出したくもない!」
彼は水の入ったグラスに力を込めた。
「でも、アイカには母親が必要だった。男手一つで育てるにも限界がある。アイカはまだ4歳だったし、早く新しい母親を見つけてあげたかったんだ」
アイカちゃんは、隣りからジッと彼の顔を見つめている。
「それから、足繁くお見合いパーティーに通って1人の女性と出逢った。保育士志望のマリコという女だったよ」
彼は一呼吸置き、続けた。
「最初は気の利く、優しい女性だと思っていた。でも、なぜかアイカが彼女に全然懐かないんだ。
理由を聞いても、マリコの後ろに怖いオジちゃんがいるだの、もう会いたくないだのとしか言わない。
だが、俺はアイカのその言葉を信じずに何度も何度もアイカをマリコに会わせた。
俺は本当に馬鹿だったんだ!」
「な、何があったの?」
私の問いに彼は俯むきながら答えた。
「殺された」
「な、なぜ?」
彼の表情が見る見る嶮しくなっていく。
「あの女は酷い女さ、あいつは前の旦那も計画的に殺していたんだ。まあ、これは後に分かった事なんだけど。
俺があの時、アイカの言葉を信じてやってさえすれば、こんな事にはならなかったのに!」
私はてっきりアイカちゃんの生き霊だとばかり思っていた。なぜなら、アイカちゃんの私を見る目がとても嶮しかったから。
『私のパパを取らないで!』
そう言っているように感じていたのだ。
彼とは何となくそれから会い辛くなり、連絡を取らなくなった。
彼からの連絡もなかった。
半年が経った頃、彼からの番号で着信があった。
「突然のお電話申し訳ありません。孝明の母ですが、アドレス帳から掛けさせて頂いております。昨日、孝明が亡くなりました」
通夜での記帳を済ませると、私の名前を見たのか、彼の母だという女性が声を掛けてきた。
私に見せたい物があると。
後日、彼の実家である山形の田舎に案内され、あの時、彼が描き掛けていた私の絵を見せて貰った。
絵は見事に完成していた。
ただ、私のすぐ隣りにはもう1人、可愛らしい女の子が描かれていた。
【了】
05/06 20:07
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▼[69]怖い名無し
ロビンさんキター!
ひさしぶりだ。お土産まで持って来てくれるとは嬉しいな。
向こうはちょくちょく読ませて貰ってる。
これからも益々のご活躍を祈ってるので、たまにはこちらにも投稿頼む。
05/06 20:12
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▼[70]怖い名無し
63点と65点
05/06 20:48
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▼[71]ロビンM
な、70点超えれるように頑張ります!
05/06 22:04
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▼[72]ロビンM、本気出します
【ベッドの下から何か黒いものが出てきたんだが】
私の彼氏は大雑把で楽天家でのんびり屋さん。
鹿児島は桜島出身の田舎育ちって事もあるのかも知れないけれど、昔から玄関の鍵を閉める習慣がないみたい。
彼の部屋へ遊びに行くたびにいつも鍵が開いているから、預かった合鍵なんて一度も使った事がないわ。
「都会は物騒だから閉めた方がいいよ」って言っても「こんな何もねぇ部屋に泥棒なんか入んねーよ」と笑われる始末。
それがある日、彼の部屋に行ったら鍵が閉まってたの。
珍しい事もあるもんだねーなんて皮肉をたっぷりと込めて言ってやったら「えっ、俺閉めてねーけど?」って言うの。
考えてたらなんか怖くなってきて、慌ててチェーンまで掛けて部屋の中で震えちゃった。
「悦子(えつこ)は怖がりだね」
彼氏は全く気にしてないみたいで、「新曲が出来た!」なんて呑気にギターなんか弾いて歌ってるけど、よくよく考えたら鍵を閉めた誰かがいるって事じゃん?
もし、泥棒がピッキングかなんかで開けようとしたんなら逆に鍵が閉まっちゃうから大丈夫だろうけど、もし開いてるのを知っていたんなら、中に入ってから鍵を閉めた可能性もあるよね?
もう私悪い方にばっかり考えちゃってガクブルしてたら、彼氏が大欠伸しながらちょっと風呂に入ってくるって言って、私一人部屋に取り残されちゃったの。
怖いよー!
この狭い部屋じゃ泥棒が隠れる場所なんてせいぜいクローゼットの中か、ベッドの下ぐらいじゃん。
クローゼットはさっき彼氏がパジャマ取る時に開けてたから違うとして、じゃあやっぱりベッドの下?
なんか後ろから変な音がしたからリモコンでテレビ消して、ジッーと耳を澄ませてたら、小さな鼻歌とコンコンっていう金属かなんかで床を突くような音がするの。
いや!振り向けない!絶対に誰かいる!剛(つよし)助けてーーーー!!!
あれ?
この曲、なんかどっかで聞いた事があるような?もしかしてこれって杏里のcat's-eyeじゃないの?
なんで今この状況で、こんなアップテンポで軽快なリズムの鼻歌をチョイスしたのかしら?
「みーつめるcat's-eye♪ みーつめるcat's-eye♪ みーつめるcat's-eye♪」
やだ!この泥棒、このワンフレーズしか知らないのかしら?それとも英語が苦手なの?なんかずっと同じとこばっかりを繰り返してるんだけど!
あっもしかして私を後ろから「見つめている」という事とをかけてるのかしら?
そしたらなんか私、馬鹿にされてるような気がしてきて段々腹が立ってきたの!声からして多分女の子だし!
で、思い切って振り向いてみたの。
「………!」
もう私一瞬、心臓が止まるかと思ったわ。
だって、ベッドの下から大きな男の頭が出てたんだもの。
しかも坊主で所々が円形にハゲてて、元巨人軍のちょっと名前が思い出せないんだけど、確か、清…なんとかっていったかな?
とにかく地黒で、本当に清にそっくりだった。しかも、ゴツゴツしたグローブみたいな大きな右手には包丁を握りしめてた。
私を殺す気?
そう思ってフリーズしてたら、また清が歌い始めたの。
「みーつめるcat's-eye♪ みーつめるcat's-eye♪ みーつめるcat's-eye♪
みーつめ、あっ!どうもこんばんは、剛(つよし)の元カレの清田和博です♡」
清は床に顔をつけたままの状態で、更にこう言ったわ。
「ねえお願い、剛を私に返してくれないかしら?」
ぎゃーーー!!!
【了】
05/06 22:07
[PC]
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▼[73]怖い名無し
惜しい69点
ワシまだ70点台つけたことないの
ちょっと厳しめに採点しとるの
あんまり気にしないでね
投稿頑張って
05/06 22:28
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▼[74]ロビンM、本気出します
【自殺を図った友人の部屋から日記が見つかり、その内容に驚愕したんだが】
この話はまことしやかにオドロオドロしくもあり、容易に納得できる類いのものではないというのが私の率直な感想なのだが、良かったら目を通して欲しい。
そしてこれは絡んだ糸の紐が解けるように突然思い出した記憶の話の内容で、忘れない内に急いで文章におこしている為か文章に若干の乱れと違和感と嫌悪感を覚える形になってしまうかも知れないが、そこもご了承頂きたい。
それは今から8年程前の昔の、春の風が心地よい春先の、午後のお昼過ぎの2時頃の春の事だったように記憶している。
不意に私のガラケーの携帯電話に幼稚園時代の子供の頃から幼馴染みである、Y.猛から、五年ぶりぐらいに連絡があった。
実名なので、申し訳ないが吉田をYと伏せさせて頂きたい。
まず最初に感じた違和感の感じが私を唖然とさせた。8和音の着信メロディーが18和音に変わっている事も不可思議だが、その奏で方がまるで滑稽なのだ。
そう、それはまるで壊れかけのレディオのように途切れ途切れで、音量も上がったり下がったりの繰り返しで全く要領を得ない。
不審に思い感じながらも、懐かしいY.猛の声を早く聞きたいという一心から、私は通話スイッチのボタンを押した。
「ガ、ガガ、ねえ、ガガ、ロビンく…ガガ、ザザ、ザザザザ、僕、もうダメ…ガ、ガガガガガ」
どうも携帯の調子が悪い様で上手く聞き取れないが、ノイズの隙間の間から聞こえてくる小さな声は紛れもなくY.猛の声だ。
「ガ、ガガ、僕、もうガガガ、死んザザザザザザザザザザザザーーー」
そこでフワリと通話は途切れてしまった。
私はY.猛の声に何か得体の知れない、注連縄で胸を締め付けられるような不安感の塊のような厭な感じを覚えたのだが、たまたま昼食中だった事もありそのままかけ直す事もなく、電話の事などすっかりと忘れてしまっていた。
すると、その日の日が沈んだ夜の7時頃にまたY.猛の電話から私の携帯電話に着信があった。
今度は正常に8和音の「愛は勝つ」を奏でている。電話は故障していないようで私は安堵のため息を吐きながら電話の携帯に出てみた。
すると、電話の主はY.猛ではなくY.猛の父親にあたる生みの親のY.昭三であった。
Y.昭三は別段取り乱す様子もなく、淡々と猛が今朝はやくに自室で首を吊って死んでいるのが発見されたのだと語り、明日の告別式の通夜のお葬式に参列してくれないかと聖書を朗読するかの様な無機質な声で私に語った。
私はもう1人の幼馴染みであり親友であり舎弟でもある、T.龍に連絡を取り、急いでT.猛の生家へと3時間ほどかけて、携帯電話のGPS機能を駆使しながら向かった。
実名なので、申し訳ないが滝川をTと伏せさせて頂きたい。
そして、猛の生家の家の前の門の正面に立った時、原因不明の頭の頭痛と腹の腹痛が私たち2人を容赦なく襲った。
ゾクリと背後に悪漢に似た悪意の塊のような恐ろしい気配を感じて振り返ると、電柱の陰から女の女子高生とおぼしきセーラー服の服装をした長い黒髪の髪型をした女性の顔が覗いており、こちらを見ながらケラケラと指を指しながら声を出さずに大笑いしていた。
するとその女の女子高生は地に腹をつけるような腹這いになったかと思うと、4本の四肢を巧みに操りながらまるで大きな蜘蛛のようにこちらへと滑るように近づいてきたのだ。
女はT.龍の右足の足首をガシリと掴み、空いた方の右手の手で、私の左足の足首をむんずと掴んできた。
それはヒンヤリとした氷のような冷たさであり物凄い握力だった。因みに数年の年月が経った今でも私の左足の足首には薄っすらとその時の手の指の黒い痣がしっかりと黒く痣のように残っている。
そして、女の女郎蜘蛛とおぼしきその不気味な様相の女は、上目遣いに長く赤い真っ赤な舌をチロチロと振り回しながら私たちに向かってこう言った。
「あんたたちも連れていこうかしら」
丁度その時、玄関ドアの扉が勢いよく開き、家の中から白髪頭のY.昭三が飛び出してきた。さすがは猛の父親だけあってかなりのデブだ。
Y.昭三は右手の手に持った大きな木製の木の十字架をこちらに向けて、
「悪霊退散!悪霊退散!悪霊退散!ぶーー!!」
と、女郎蜘蛛に向かって口に含んだ聖水を吹きかけ、銀色のボールに入った生卵の卵をいくつも投げつけ始めたのだが、運悪くその内の3つか5つがT.龍の顔の顔面にヒットして、顔は黄身の黄色と白身の白色で異常なまでにベトベトにベットリとベトついてしまった。
昭三は幾分か申し訳ない顔をしながらも、一瞬怯んだ女郎蜘蛛に向かって再度、日本酒の入った一升瓶の中から酒を一口、口に含み「ぶー!!」と女郎蜘蛛に霧状に吹きかけたのだが、霧状にし過ぎたのが災いしたのか隣りにいるベトベトの龍の顔にもその酒の日本酒の聖水が降りかかってしまった。
女郎蜘蛛は「ひっ!」短い言葉の悲鳴を残し、煙りのように物凄い速さで電柱と電柱を渡り飛びながら消えて行った。
05/07 23:21
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▼[75]怖い名無し
昭三は私と龍をリビングに招き、猛が自殺したという二階の猛の部屋へと私たちを誘導した。
押すタイプのドアの扉を横にスライドさせたその瞬間、私たちは「はっ!」と息を呑み、唾と一緒に固唾を呑むこととなった。
壁一面に余す所なく蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛のポスター。
天井一面にも蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛のポスター。
床一面にはセーラー服、ブレザー、ブラジャー、パンテー、ストッキング、ハイレグ、ビキニ、ルーズソックス、汚れた白いワンピースなどが大量に散乱しており、所狭しと無造作に山のような形を作っていた。
「こ、これは!」
私の言葉を遮った昭三は、あるときから猛が急に蜘蛛好きになった事をカミングアウトした。
将来は蜘蛛博士になると豪語する猛は遂に蜘蛛を集めるだけでは事足りず、蜘蛛を舐め始め、遂には食べ始めるようになったという。
将来は蜘蛛レストランを作る!と夢が二転三転する猛は、とうとう昨年辺りから女郎蜘蛛になりたい!と言い始めたそうだ。
昭三は猛の机の引き出しの中から見つけたという日記帳のような小さく古びたノートを、震える手でそっと私たちに差し出してきた。
それによると、猛は女の女子高生風のセーラー服を身に付け、オヤツ代わりに蜘蛛を香ばしく揚げたやつを食べながら街中を練り歩き、用事もないのに毎日のように朝の満員電車に揺られながら「子蜘蛛ばら撒きテロ」を決行していたのだという。
しかし、相次ぐ通報と職質に業を煮やし、以前から密かにしたためていたある作戦を決行する事にした。
それは処女の血を吸った毒蜘蛛をある儀式を行った後に炙って体内に取り込む事で、超人的な身体能力を秘めた女郎蜘蛛に突然変異するという訳のわからない作戦だった。
猛は闇サイトで知り合った怪しい住人から超危険な毒々しい毒蜘蛛を一匹仕入れ、夜道を歩いていた部活帰りの女の女子高生に標準を絞り背後から近づいた。
毒蜘蛛に首の後ろを噛まれた女の女子高生は「ぎゃあ!!」と悲鳴を上げたかと思うとショックの為か、すぐさま泡を吹いて絶命してしまった。
猛は女子高生を背中に担ぎ、奇跡的に誰にも見られる事なく電車を乗り継ぎ、富士の樹海まで辿り着き、女を自殺と見せかけて両手両足をきつく縛り、首を切断して火をつけて逃げたという。
猛は家に帰り震えた。
作戦は見事に失敗した。しかしもう一度アレを見たい。
女が絶命する時のあの絶叫と悲痛な表情が堪らない。猛の中に眠っていた邪悪な悪魔が目を醒ました瞬間だった。
翌日、猛はいつものように満員電車子蜘蛛ばら撒きテロを成功させた後、夜を待って人気のない田んぼの中の田んぼ道にある、女子高生達の帰り道でもある田んぼの所の横の死角に入りこみ、田んぼを通って帰る獲物を待ち構えた。
すると、暗い田んぼ道の向こうから部活帰りであろう女子高生が1人歩いてきた。
暗いので見えにくいが、雰囲気でなんとなく可愛いと分かる。
猛は女子高生がすぐそこまで近づいたのを見計らって、田んぼの死角から勢いよく飛び出し、女の女子高生を後ろから押さえつけた。
女子高生は恐怖の為か、前の時のような悲鳴を上げずにブルブルと震えている。
「ちっ!ツマンネーな!泣けよ!ほら泣けよ!ほら!なけ、なけ、なけ、なけー!」
猛は女の髪の毛を後ろから鷲掴み、強引に引っ張ると、ゴキャン!!と骨のネジ切れる音がして、女子高生の顔がこちらを向いた。
「また私をコロス気?」
真っ白い顔にポッカリと空いた2つの空洞には眼球がなく、代わりにザワザワと物凄い数の蜘蛛達が這い出してきて、猛の手を伝って顔にまで登ってきた。
「ぎゃ!!」
気づくと猛は自室のベッドで目覚めた。
夢かと思い見上げると、人間ほどの大きな蜘蛛が一匹、天井にへばり付いていた。
なぜか頭だけが人間で、逆さに垂れ下がった長い黒髪の上から、真っ赤に光る赤い両目が猛を睨んでいた。
猛の日記はそこで終わっていた。
最後の日付は今から2日前、猛が自殺した前日の事である。
「あ、兄貴、これって猛、女郎蜘蛛に呪われてますやん!」
龍が今まさに私の考えていた言葉を口に出してしまった瞬間、昭三がその場に泣き崩れてしまった。
私たちはこの日記の内容がもし事実だとするならば、ただの猛の自業自得な上に、自殺の原因も分かった事で、何か胸に支えていた魚の骨が取れたかのようにホッとしたのを覚えている。
泣き喚く昭三を二階に残して帰ろうと階段の下の階下を見下ろすと、先ほどの女郎蜘蛛が音も立てずにゆっくりと6本の脚を器用に動かしながら登ってきていた。
女郎蜘蛛は笑っているが、隣りの龍の顔は「曇って」おり、後ろの昭三は涙と鼻水で「苦悶」の表情を浮かべている。
私は「雲」をも掴む思いで、足元に転がっていた太宰治著書の「注文の多い料理店」ではなく、敢えて「蜘蛛の糸」という分厚い本を手に取り、女郎蜘蛛に向かって投げつけてた。
「ぎゃーー!!!」
階下から女郎蜘蛛の鋭い断末魔が響き渡ったと同時に私の意識は途絶え、次に目を醒ましたのは病院のベッドの上ではなく、彼女である香織の部屋のベッドの中だった。
「なんだ夢か?」
妙にリアルな夢を見たなと寝ている香織の頬にキスをしてから立ち上がると、ベッドの下に何かが貫通したかのように丸い穴の開いた太宰治著書の「蜘蛛の糸」が転がっていた。
顔を洗い、テレビを見ていると香織が目を醒ましたのかベッドの上から甘えたような声をかけてきた。
05/07 23:23
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▼[76]怖い名無し
「ちょっとー、昨日は途中で急に寝ちゃうから私悶々としちゃってなかなか寝れなかったんだぞ!今から責任とれ!この役立たず♡ うふふ」
見ると、香織は掛け布団を両手の手で抱きしめ、クネクネと腰から下をスイングさせている。恐らく、掛け布団の下は今大変な事になっているのではなかろうかと容易に想像がついた。
私は二枚目俳優バリに渋い声でやれやれと腰を上げてベッドに向かおうと立ち上がると、突然、左足首に重たい激痛が走り、よろけてしまった。
ベッドに腰掛けて確かめてみると、私の左足の足首には紫色に内出血した指の後がクッキリとついていた。
驚く香織に夢の内容を話すと「猛?猛って誰よ?」ときた。香織も小学校から同じクラスなので猛を知らない筈がない。
実は猛が存在していなかった!などという「夢オチ」よりも悪質な「存在しなかったオチ」はなんとしても避けたい一心で「良く思い出せ!」と香織の両肩を揺すっていると、香織が「何か音しない?」と言い出した。
周りを見渡しジッと耳を澄ませると、頭上の天井から微かにカサカサと紙の擦れるような音がした。
恐る恐る見ると、6本脚の女郎蜘蛛が天井に張り付いていた。
私は「うわっ!」と悲鳴を上げて布団を頭から被った。
しばらくして香織が「ねえ、天井に何かあるの?」と言ってきたので、ゆっくりと布団から顔を出して天井を見上げると、身体が蜘蛛で頭が人間の女郎蜘蛛が天井にベタリと張り付いていた。
私はまた情けない悲鳴を上げながらテーブルの下に逃げ込んだ。
暫く震えていると、香織が「もう知らない!」と拗ねた声で寝室から出て行く音がした。恐らくモヤモヤした気持ちを洗い流すためにシャワーでも浴びに行ったのだろう。
やはり香織にはアレが見えていないのか?
私は一先ず落ち着いて、自らの精神状態を冷静に分析する事にした。
蜘蛛のお化けに猛が取り憑かれて自殺させられる夢を見て、少なからず同様しているのは確かに明確な事実である。
ここ最近、身内の不幸が続いており、冷静な判断が出来ずに、居もしないモノが見えてしまっているのではないだろうか?
だいたい、常識的に考えてこの科学の情報化時代に女郎蜘蛛なんて昔話に出てくるような妖怪が現実に現れるなんて馬鹿馬鹿しい事があるものか、くだらない!
て、言うか猛って誰だよ?そんな奴いたか?知らねーよ馬鹿野郎!もう顔も思い出せねーよ!
私はため息を1つついて、テーブルの下からノソノソと這い出し、笑いながら天井を見上げた。
すると、天井に黒々とした長い髪の毛を垂らした、顔が人間、身体が6本脚のまるで「女郎蜘蛛」のような姿の女が逆さまに張り付いていた。
【了】
05/07 23:25
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▼[77]怖い名無し
66点
05/08 18:01
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▼[78]怖い名無し
いつの間にロビンさんが投稿してくれてた!
今から読ませてもらいます。
●話、荒れたり退会者続出とか大変っすね。なんと怪談師さんが降臨してるし。
ロビンさんだけじゃなく怪談師さんとこげさんがそっちにいるとかすごいな。というかやばい。
05/17 02:21
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▼[79]怖い名無し
女性
あっちはあっち、こっちはこっちですよ
05/17 21:42
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▼[80]ロビン&◆dWPSRUulfZ
やあロビンミッシェルだ。
今回は80点を狙ってやってきたんでよろしく…ひひ…
【スケッチブック】
これは私がまだ高校生だった頃、友人と電車を乗り継いで明石海峡大橋が一望できる海水浴場に出掛けた時の話だ。
駅を出ると180度パノラマの真っ青な海と空が待っていた。
チリチリと肌を焦がす太陽に、甘ったるいココナツオイルの混じった潮風が私達5人を包み込んだ。
ビーチには溢れんばかりの人、人、人。
海の家から流れてくる開放的な音楽にテンションの上がりきった私達は、さっそくTシャツの下に忍ばせていた水着姿になると誰とも言わず海の中へと飛び込んだ。
あまり泳ぎの得意ではないレイは、私達のはしゃぐ姿を尻目に砂浜にシートを張り日傘を立てて、何やら得意のスケッチを始めている様子。
一頻り泳ぎを楽しんだ私達はコーラで乾杯し、今更ながら日焼け止めクリームをお互いの身体に塗りあった。
「ねえレイ、絵見せてよ」
私がそう言うと、レイはまだ描きかけのスケッチを私に見せてくれた。
そこには思った通り、海の中で馬鹿みたいにはしゃぎ回る私達を模写した一枚が。
だがよく見てみると私の右肩辺りに、明らかに下半身のないお婆さんがしがみ付いていた。
「レイ、こ、これはどういう事?」
私はフツフツと肩から背中にかけて鳥肌が浮き立つのを感じた。
「うん、多分このお婆さんは何年も前にどこかで身投げか水難事故にあって、此処まで流れ着いたんだと思う。
お婆さんたら、こよりが自分の娘に似てるからって離されないように必死で肩に噛み付いていたのよ」
「ちょ、マジで? 」
麦わら帽にサングラス姿のレイは、私からスケッチブックを受け取ると続きの筆を紙面に走らせ始めた。
「でももう大丈夫だと思うよ。こよりが砂浜に上がってきた時には、お婆さんの上半身がゴムみたいにびよーんて伸びて、海の中に戻っていっちゃったからさ」
「………… 」
するとそこへ、トイレから帰ってきた生まれつき肌の浅黒い、夏大好きなハーフのサンが、ビーチボールを膨らませて私達に勝負を挑んできた。
お昼ご飯を賭けて2対2のビーチバレーをやろうですって。
「望むところよ!」
周りの迷惑も顧みずにドタバタと砂浜を転げまわる私達。レイは相変わらず日傘の下で黙々とスケッチを続けている。
結局、サンチームの圧勝でバレーを終了させた私達は、再度コーラで乾杯し、乾いた喉をゴクゴクと潤した。
「ねえレイ、次は何を描いてたの?」
私がそう言うと、レイはまた描きかけのスケッチブックを見せてくれた。そこには案の定ビーチバレーを楽しむ私達の姿があった。
やはりレイの画力は本物だ。とてもこんな短時間で描いたとは思えない程の躍動感に満ち溢れた素晴らしい絵に仕上がりつつある。
「ねえ、これは何?」
いつの間にか私の後ろから絵を覗き込んでいた幼なじみのバンビちゃんが、絵に描かれた私の足元を指差して言った。
「手じゃないのこれ?」
確かによく見ると、私の足首を砂浜から伸びた何本もの白い手が掴んでいるようにも見える。
レイはサングラス越しに言った。
「これはこの先の墓地に眠っていた死者達の悲痛な怨念達が集まって、偶然手となって具現化したモノよ。
ここの砂浜にはずっと昔に、墓地から石碑ごと流されてきた土や石がたくさん混ざり合っているから」
レイが所謂「不思議ちゃん」だという事は以前から知っていたけど、これはいくらなんでもやり過ぎなんじゃないの?まさか私に何か恨み事でもあるのかしら?
そんな事を考えていると、レイの口元がニタリと笑った。
「あ、でももう大丈夫よ、心配しないでこより。試合が終わったと同時にスルスルと土の中に消えていっちゃったから」
「………… 」
昼から少し気分の悪くなった私は、海の家の座敷の上で横にならせて貰っていた。
目を閉じると、レイの絵にあった顔の膨らんだお婆さんの顔がチラつく。
それでも暫くすると緩やかで気持ちの良い潮風に誘われて、ウトウトと舟を漕ぎ始めていた矢先、キーンと耳鳴りが走り、誰かが私の顔を覗き込んでいるような気配を感じた。
ゆっくりと目を開くと、私の周りを何十人もの人間がぐるりと取り囲むようにして座っていた。
ぶよぶよに顔の膨らんだ老婆や泥だらけの子供、眼球が飛び出した男や、顎が千切れてなくなっている女。皆が一様に、私を感情のない空虚な表情で見つめている。
「や、や、やめて!」
ガバリと跳ね起きると一瞬でそれらは跡形もなく消え失せ、海の家は先ほどまでのゆったりとした空気に戻っていた。
「あーもう、こより、動いちゃダメじゃん」
向かいの長椅子には、サングラスを外した美しいレイが座っていた。
「せっかく今日いちの絵が描けると思ったのにー、残念」
レイはスケッチブックをパタンと畳み、立ち上がると、皆んなの待つ砂浜の方へと歩いていった。
【了】
09/27 07:11
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▼[81]採点おやぢ
79.8点
09/29 05:03
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▼[82]ロビンM
お、おしい!!…ひ…
09/29 13:22
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