投稿記事
次の日。 一晩経って冷静になったY子さんは、見下していた同僚を怖がってしまったことに苛立ちを覚え始めていた。 この先優位を保つためにも、K美さんが昨夜何をしていたのかはっきりさせて、「なんだ、こんなことか」と笑い飛ばさなければいけないと思った。 そこで、M弘さんに頼んで彼女を夕飯に誘ってもらうようにした。 確実に定時で帰らせて、机を漁るのだ。 M弘さんの部署では要領の悪いK美さん以外で残業する人は稀だから、まあなんとかなるだろう。 もし誰かに見られたとしても、忘れ物を取ってくるよう頼まれたと言えばいい。 その日、Y子さんはそわそわと少し居心地の悪い思いをしながら過ごした。 定時になってからも暫く仕事を続け、ゆったりと片付けをしてから、頃合いを見て隣の部署に向かった。 K美さんがいつになく急いで退社したのは確認していたし、幸い他の社員も帰った後だった。 机の上にあるのはパソコンとペンスタンドくらいなのでスルー。 ひとまず、机の引き出しを片っ端から開けていく。 程なく、それは見つかった。 一番大きな収納スペースにあった、ポケット式のピンクのファイル。 その最後のページに、証明写真くらいの大きさの四角い紙が幾つも保管してある。 異様なことに、そのどれもが紙の表面が見えない程のホッチキス針で埋め尽くされていた。 実際は、紙だと判断するのにも時間がかかったくらいだ。 「うげ、なにこれ〜」 気味悪く思いながらも、針の塊を机上にバラ蒔くY子さん。 数えてみると、それは25個あった。 奇しくも、その時のY子さんの年齢と同じだったらしい。 ひとつ摘まみ上げて、Y子さんはあることに気付いた。 紙が2枚重なっている。 ただ無意味に針を刺していたのではなく、通常の用途通り何かと何かを留めるためのホッチキスだったということだろうか。 何をそんなに念入りにくっつけてあるのか気になって、Y子さんは針をひとつずつ取り除いてみることにした。 ただし、家に持ち帰ってからである。 万が一誰かに覗かれては、Y子さんの方が変な目で見られかねない。 ホッチキス針の塊を二個拝借して、残りとファイルを元通り引き出しにしまって会社を出た。 帰宅したY子さんは、早速針の除去作業に取りかかり… そして、戦慄した。 針が減っていくにつれ、嫌な予感はしていたのだ。 一枚目はK美さん本人の写真だった。 自分の顔の上に何度もホッチキスを通すことだけでも十分オカシイが、そのくらいはまだいい。 それが重ねられていたのは、Y子さんの社員証写真の複製の上だった。 震える手で針を取り除いたふたつめの塊からも同じように、K美さんとY子さんの写真が出てきたという。
[
掲示板
]
mobile-bbs