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やあロビンミッシェルだ。 この世には人形に纏わる怪談がごまんと有るが、この話もその一つと言えるだろう… 人の手により丹精込めて作られた物には、時に不思議な何かが宿るのかも知れないな…ひひ… 【市松人形と夏美、時々おとん】 五歳の夏美には苦手な物があった。 それは二階の客間に置いてある市松人形だ。 この頃徐々に奇妙な物が見え始めていた夏美はこの人形に酷く怯えていた。 「 私この子嫌い! 」 「 もう、夏っちゃんは何で叔父さんがくれたお人形さんをそんなに悪く言うの? 」 「 だってこれ怖いんだもん… 」 「 何処が怖いのよー? 可愛いじゃないのぉ、そんな事言ってたら憲司叔父さん天国で悲しんでるわよー、ちゃんと大事にしてあげなさい。」 母の前ではコクンと頷いて見せたが、この人形の持つ異常さに何と無く気付いていた夏美はそれからも二階の客間へ近づく事は無かった。 しかし夏美と一卵性で共に生まれた美菜は、逆にこの市松人形をとても気に入っていた。 よく硝子ケースを開けては膝の上に置き、楽しそうに話し掛けたりもしていた。 この人形を七五三の記念にと我が家に送ってくれた叔父の憲司さんは心筋梗塞を患い、もうこの世には居ない。 特別憲司さんに懐いていた美菜は、そんな叔父をこの人形に移し換えていたのかもしれない。 … ある晩夕食の用意をしていた母がテレビを見ている夏美を呼んだ。 「 夏っちゃん悪いけど二階のカーテンと雨戸閉めて来てくれない? 」 「 やだ!! 」 「 もう、お願い夏っちゃん!今お母さん手が離せないの、あなたお姉ちゃんでしょ? 早く行ってきなさい! 」 夏美は渋々ちびま○子ちゃんのCM中に二階へと駆け上がった。 二階はシンと静まり返っており、五歳の夏美には只々恐怖でしかない。 何時もは美菜と一緒なので平気なのだが今日は一人、この客間の前を通るだけで涙が出そうな程怖かった。 両親の部屋と子供部屋の雨戸を閉めカーテンを引く、後はあの客間だけ… もう長い事この部屋へ足を踏み入れていない。 中には古い桐箪笥と立派な床の間があり、親父の趣味で高そうな掛軸と日本刀が数本飾られている。 あの市松人形も… 夏美自身も何故自分がこれ程までにこの人形に対して恐怖を抱いているのかよく分からなかった。 別に人形が動く訳でも無く、話す訳でもない、至って普通の和人形だ。 只、本能的にこの人形から発せられる異様な空気、気配が怖かったのだ。 「 もうCM終わっちゃう… 」 夏美は覚悟を決めた。 ギィ… パチン… スイッチを入れると三回点滅してから蛍光灯が部屋を照らした。 ヒンヤリした空気と木の匂いが鼻を突く。 横目でチラリと覗くと日本刀の隣りに硝子ケースが見える。 赤い着物を身に纏った市松人形。 夏美は意を決したかの様に脇目も振らず窓辺へとダッシュした。 網戸を閉める! カーテンを引く! 任務完了! ホッと安堵した拍子に見てしまった。 見なければ良かった。 硝子ケースの中で、市松人形が激しく頭を左右に振っていた。 音も無く。 一心不乱に頭だけが左右に揺れている。 悲鳴を上げようと大きく口を開くが、肝心の声が喉から出て来ない。 動けない。 立ったままの金縛り。 来るんじゃなかったと夏美の頬を涙が伝ったが、時すでに遅し。 蛍光灯の灯りが微妙な明るさを残しつつ点滅を始めた。 入り口のドアがゆっくりと一人でに閉まりかけている。 見なくてもいいのに自然と目が市松人形へと向いてしまう。 もう首の動きは止まっていた。 しかしその顔は此方を向いていた。 まるでペンライトでも仕込まれているかの様に人形の両目が赤く光っている。 蛍光灯に合わせるかの様にその赤い目も点滅を繰り返し始めた。 バタン!!! ドアが閉まった瞬間、蛍光灯の灯りは完全に落ち部屋は真っ暗になった。 … …キィィ…カタン… 暗闇の中で二つの小さな赤い光がユラユラと揺れている。 ズリ… ズリ… 来る、コッチに来る!! ズリ… ズリ… ズリ… 夏美の足に何か硬いモノが触れた。 恐る恐る足元を見ると、小さな赤い光が二つ此方を見上げている。 「 お、おかあ…さん… ヒック… うう… おかあ… 」 夏美は動く事も出来ず、声を出す事すらも出来ない。 その時…
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