投稿記事
テントの外で気配が揺れる。 鈴の音に反応した…みたいだ。 念仏を唱えながらゆっくりと奴等は…震えながら出入り口を睨む俺の右側へ テントを回りこむように移動を始める。 錫杖が地を撞き…宙に踊る遊環が擦れあう。 真上…俺達のいるすぐ上であの鈴が鳴った。 テントの頂上部分が何か重みを受けているようにへこんでいる。 僅かに体重があるのか… 念仏を唱える何者か等は…テントを囲み、時計回りに移動を続ける。 時折、錫杖を地面に突き立て…12本の遊環が踊り、激しく凛と金属音が鳴り響く… ぬかるみを踏み、歩み続ける草鞋履きの足音… 止むことのない念仏… 生きた心地がしなかった… 俺達はただ…夜が明けるのを待つ… AさんもBも何も言わない動かない。 テントの上にいる何かの視線を感じて俺は上を見た。 テント生地を突き抜けて俺を確実に視線は捉えている… たぶん、逸らすとアレは中へ入って来る… 確信めいたものがあった。 怖い怖いと怯えながら 怖い怖いと慄きながら 真上を睨み…そろりそろりと圧し掛かってくるような重圧に耐え続ける… 闇が一番濃い時間を過ぎ… 黒一色だった世界にゆっくりと色が取り戻しはじめた。 朝がくる… 一秒一秒…過ぎていく。 テント地の外が白々と… そして、ついに黄金色の輝きが… 朝日が闇を払拭する… 真上から受ける視線… テントを上から押す重みが消えた。 周囲を廻り続けた草鞋履きの足音も、錫杖を撞く音も、 次第に聞こえなくなっていった。
[
掲示板
]
mobile-bbs