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奥に聳える濃緑の山々、 日が傾き、陰が存在感を増していく。 波ひとつ立たない完全な静水面… 太古に大地を闊歩した竜が骸となって横たわっている様な… 水中から天に向かって伸びる立ち枯れの樹木… もう、これは人界の景色ではない。 まるで… これは 彼岸… 「あ、なあ…見てみろよ…あれ…」 水際にいたBが水面を指差す。 「すごいよな…この世のものとは思えないよな」 「いや、そうじゃなくって…水の中…」 「あ?」 言われて足元を見る。 土…じゃ、ない…垂直に落ち込んで・・どこまでも…深い… 底がまるで見えない…立ち枯れの木ってどこから生えてるんだ… 「なにかいるぞ…」 俺の横…水面を指差すAさんの声が震えている… 人か?確かに人だ、水中に人がいる…一人や二人ではない。 しゃがんで青い水の奥を覗き込む。 頭に鉢巻、顔には刺青…前を打ち合わせる長衣…細い帯…手甲に脚絆… 鞘のある山刀を差している…典型的なアイヌ民族衣装 女もいる…マタンプシ(鉢巻)ニンカリ(耳輪)レクトゥンペ(チョーカー) タマサイ(首飾り)、テクンカニ(腕輪)… モウル(肌着)の上にチヂリ(刺繍を施した木綿衣)を纏った・・・ 儀式や祭事で着るアイヌ民族の正装じゃないか… 他にもアットゥシやルウンペといった長衣…マンタリ(前掛け)をした男女もいる。 アイヌだけではない… フランス式の軍服を着て大小を差し、背中に小銃を担いだ…蝦夷共和国の兵士か? 新政府軍の兵士もいる…松前藩士だろうか…侍もいる… 旧日本軍兵士もいる…現代人もいる…
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