投稿記事
時間は分からない… いきなり、眠りの一番深いところから無理矢理に目覚めさせられたのだ。 薄く目を開くと、消灯したカンテラの尻が見える。 周囲を確認しようと…首を動かそうと…おかしい… どれだけ力を込めようとも動かない。 手足も同様に…指一本、間接ひとつ…駄目だ、動いてくれない。 全身がカチカチに固められた。 頬に触れる空気が恐ろしく冷たく乾いている。 口の中…喉もカラカラで…鼻の奥がつんと痛い… 隣で寝ているBを試しに呼ぼうとしたが声も出ない… これは、完全な金縛り状態だな。 毎晩の習慣となってしまったテントの四隅に盛塩は済ませてある。 慣れている…金縛りの解き方は分かる…焦る必要は…ない… 放って置いても自然に解けるものだし… かなり離れた場所で… 魚が水面から勢いよく跳ねたような音がした。 全身が動けない分…聴覚が異常に研ぎ澄まされている…のだろうか… 本来なら絶対に聞こえない音…聞こえるはずのない距離… 道路を挟んで向かい側、 ボート乗り場…料金所…長い桟橋…いや、その先… 落ちてこないな… 魚が飛び跳ねたのであれば水面を叩く…遅れて落ちる音もしなければ… しかし、それがない。 単に聞こえなかったのか…跳ねた物体がまだ空中に浮いてるか… ポタリ…ポタポタと 板張りの床に滴り落ちる水音…心の奥へ沁み入るような… 水から出た何かは…桟橋へ上がった…聞こえようもない音をたて… 今夜も来たんだな…怪異… ゆっくりと…水を滴らせながら…桟橋をこちらへ向かってやってくる。 自らの位置を示す様に…濡れた身体から水を滴らせ… 単なる金縛りならば、焦る必要もないのだが… 想像してしまった。 あれが…首長竜の末裔とされるクッシーだとしたら… 金縛りなんか仕掛けてくるということは…首長竜の末裔の幽霊だとしたならば… 水から上がって落ちてこないのは…説明がつく。 身体は湖にあり…首だけが…こちらへ…
[
掲示板
]
mobile-bbs