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「クソ!間に合わなかったか…」 遠ざかっていく列車の後姿を見送り、ため息を吐く。 最終電車が来るまで40分か… 金曜の夜… 列車を下りた客たちは足早に連絡通路へ向う階段を上っていってしまった。 幾人かいたはずの駅員も、姿はすでにない。 春まだ遠く、北風が吹きすさぶ極寒のホームへ一人取り残された俺… 暖房の効いた待合所へ戻る気力もなく、 自動販売機で微糖の缶コーヒーを買ってベンチへ腰を下ろす。 連日の激務で精根尽き果てる寸前だ。 社運が懸かっているからと言っても働かせ過ぎだろう上司と会社… 今月も残業が100時間を軽く突破したぞ… 人を減らして給料減らして、責任とノルマだけは割り増しにしやがる。 今夜こそ、午前0時を迎える前には帰れると、思ったんだがな… 鉄道会社も不景気なのか、そろそろ看板だから…なのか、構内がやけに暗い。 蛍光灯がチリチリと音を立てて明滅を繰り返し…ホームの端から先は濃い闇で満たされている。 両掌の中にあるスチール缶は、外気に熱を奪われ、どんどん冷めていく。 明日は久しぶりに休日出勤もなく、自宅でのんびり昼まで寝てやろうと会社を出たのだがな… 駅前のビジネスホテルかカプセルホテルにでも泊まることにして、 酒飲んで、ラーメン食って、サウナ入って 朝までぐっすり眠って帰るプランもあった… 「その方が良かったかもな。」 温くなりかけているコーヒーを一気に飲み乾し、 月の無い空を仰いだ。
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