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最初に俺を呼び止めた…アレを見たライダースーツの男とBが困った顔をしている。 アレ…だからな… 変な人間に思われたくなければ上手く誤魔化せと二人の表情が物語っている。 しかし、知りたいと言うなら… 別に教えても差し支えないんじゃなだろうか。 「エスクードのタイヤにな…どっちも前輪のタイヤに… 地面から首だけ出した女二人が歯を剥き出しにしたすごい形相で喰らいついてた」 迷信とか言われているが、塩と米と清酒って案外、ああいうのに効くもんだな… と、言葉を繋げようとしたのだが… 俺以外…踏み切りを背に立つ俺以外… 一瞬、人を馬鹿にしたような気の毒な人間を見るような顔をしたあと 下顎が地面まで落ちるのではないかと心配になるほど開け、 零れ落ちるほど目を大きく見開く驚愕の表情となった。 それから声にならぬ悲鳴をあげ蜘蛛の子を散らすように 我先にとヘルメットを被る暇も惜しんでバイクに跨ると 一目散に踏切から走り去ってしまった。 「なんなんだ?」 残っていたBと一番初めに俺へ話しかけてきたライダースーツの男が 「う、後ろ…後ろ!!」 顎で俺に背後を見てみろと促す。 「俺は志村じゃねーよ」 振り返ると、先ほどエスクードが停まっていた踏切… 低い位置で何かと視線が合った。 全身の毛が逆立ち、背骨を悪寒が一気に駆け抜ける。 せっかくの獲物を 俺の手によって逃がされてしまったからだろうか… 怨めしげに ガチガチと歯を噛み鳴らす女の生首が レール上に二つ並び 血走る瞳で 俺を睨みつけていた。 (了)
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