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その男との最初の出会いはバイト先のカウンターだった。 空港からお客さんを事務所に連れて帰ってきた。 書類を作成する為カウンター越しに接客していると、待合い席で小汚いおっさんが居る事に気がついた。 その男はお客さん用の新聞や雑誌をカウンターテーブルに散乱させ、テレビを見ている。 カウンターテーブルには、リモコンも置いてありテレビのチャンネル権は彼が持っているようだ。 その男が何故そこに居るのかは分からないが、事務所に詰めている他の従業員は特に関心がない様子だ。 一通り説明を終え お客さんを送り出した。 男はまだ そこでテレビを楽しんでいる。 事務所で「あのおっさん誰ですか?」と聞くと、「知らない」と返ってきた。 島人は本当にのんびりしている。 お客さんでも無い人が待合い席で我が物顔で居座っていても何も言わない。 僕の相棒の『ンギー』は その男が気に入ったのか、横で寝ている。 『ンギー』とは僕の屋敷に昔から住んでいる豚の妖怪だ。 『ンギー』が僕から離れるのは珍しい。 いや初めて僕以外の人間の側にいる。 夕方お客さんを空港に送迎し、帰ってくると男は居なくなっていた。 『ンギー』の姿も見えない。 その男について行ったのだろうか? その日『ンギー』は帰って来なかった。 次の日も そのまた次の日も。 続く
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