投稿記事
一昨年の夏にメール便配達のバイトを始めた。 「零」感体質を自負していた私が、それ以来ほんの少しだけ不思議な出来事に出会すようになったのだが、今回の話は心霊に関係があるかどうかすら実ははっきりしない。 詳細は完全に不明。私が勝手に、なんとなく気にかかっているだけである。 それでもよければ聞いて欲しい。 特定され易そうな件なので、場所は完全に隠すことにする。 これまたマンションの話だ。 私が配達を始めた時点で、新築と言って差し支えなさそうな外見をしていた。 さて、古めのアパートなんかだと、縁起が悪いとして4号室を設けていないところも見掛けるが、昨今の集合住宅では4(=死)を飛ばさないことも多い。 そのマンションは4号室のあるマンションだった。 101号室から102、103と来て、104を飛ばさずに105、106、107で1階は終わり。 2階も同じように201号室から207号室まで。 3、4、5階と部屋数は変わらず、507号室が最後の部屋らしかった。 1年程通って気付いたのだが、どうも204号室の住人がコロコロ変わる。 その時点で恐らく10人近い名字を見ていたのではないだろうか。 複数の人が同居している場合もあるが、10人ともなると企業ぐらいしか考えにくい。 しかし、宛名に会社名が印字されている商材にお目にかかった試しはなかった。 ポストに表札が出たことも2度程あったが、すぐに外され、大抵は何も書かれていない状態のままだった。 集合ポストの場合、表札がなければ部屋番号のみ確認して投函してもいいルールだ。 以前の人と違うとは思いつつも、部屋番号通りに商材を放り込む日々を過ごしていた。 ところがある時、204号室のポストがなくなった。 清水さん(仮名である)という人に2ヶ月程配達した頃で、1回しか名字を見ないような人もいる中、この人は少し長い気がするなと思っていた矢先のことだ。 204号室のものだったポストには新しく、208のシールが貼られていた。 2階だけ4号室がなくなり、代わりに8号室ができたという体である。 ほかの階は今まで通りなので、違和感が非常に大きい。 そもそも増築している様子などなかったはずだ。 恐らく部屋はほぼそのままで、部屋番号が変わっただけだろう。 番号の変更に、一体何の意味があったのか、それとも結局なかったのか…。 208号室のポストは、1ヶ月ちょっとそこに存在していたが、最終的に閉鎖されてしまった。 今では投函口にテープが貼られ、そこに配達することはなくなった。 208のシールが剥がれ、再び204号室に戻ったその部屋に、住んでいる人はもういない。 (了)
[
掲示板
]
mobile-bbs