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玉置さんは一呼吸置いてからこう言いました。 「僕はどうやらこの世界の人間ではないようなんです」 えっ?と思いました。すると玉置さんは私を真剣な顔で見つめながら言ったんです。 「 あのCDにただならぬ恐怖を感じた僕は、間違いなくあの時捨てたはずなんです。それが、この間部屋を整理していた時に見つけたんです。黒ずんだシングルCD。本と本の間に挟まっていました。 その時は隣りに彼女もいたので気が大きくなっていたんでしょうか?彼女の了解を得て、やめとけばいいものをそのCDを再生してしまったんです。 ボーン ボーン ボーン 前聞いた時と同じような壁掛け時計の音です。しかしその後に前は間違いなく入っていなかった音声が流れました。 キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア 僕の部屋に女性の甲高い悲鳴が鳴り響きました。 と次の瞬間、僕は部屋で一人で寝ていました。隣りに居たはずの彼女の姿はなく、再生していたCDデッキもありませんでした。 『もう帰れないよー』 玄関へ続く廊下の暗がりから女性の声がして僕は飛び上がりましたが、電気を付けてみると誰もいませんでした。 それから一月程経ちますが、先ほども申しました通り、どうやら僕の今居るこの世界は元居た私の世界では無いようなんです。僕にはあの悲鳴を聞いた瞬間に別次元に飛ばされたとしか思えないのです。 というのも、僕は豚骨ラーメンというものを食べた事がないのです。僕の居た世界では絶対に豚は食べません。豚は神聖な存在で食べれば捕まってしまうはずです。この世界には僕の彼女もいませんし、三つ下の弟が妹に変わっていました。 あとこれは一昨年の話ですが、テレビを見ていて心臓が止まるかと思いました。都知事のおばさんの顔があの時僕がリサイクルショップで見たお婆さんの顔と酷似しているのです。 そして僕があの時に持ち帰ったシングルCDのアーティストの名前が微妙に違っている事にも気がつきました。 僕が知っているユニット名は、「チャゲ&龍泉」なんですよね。」 そこまで言うと玉置さんは大きくため息をつきました。 「僕はもうこの世界で生きて行くしかないのでしょうか?」 私には玉置さんが冗談を言っているようには思えませんでした。
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