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「ものは相談なんだが」 低い陽射しは暖かくとも、容赦なく吹き荒ぶ風はやっぱり真冬のとある昼下がり。 俺たちふたりを学食に呼んで、ありかちゃんが言った。 「妊娠したかもしれない」 「は?寝言ほざいてんじゃねぇ殺すぞ」 衝撃発言に間髪入れず、六佑(ろくすけ)がドスをきかせる。 これは相当動揺しているな。 ぶっきらぼうで口の悪い幼馴染みは、慌てる程声が低くなるのだ。 かく言う俺も、まあまあ驚いてはいる。 ありかちゃんは、異性やそういうコトにあんまり興味がないし、当然彼氏もいない。 元々突飛なことをする娘だから何を言ってもおかしくはないが、普通にせっくすをして子どもができたとはちょっと考えにくかった。 となると、ありかちゃんの言い方が悪い…すなわち誤解の可能性がある。かもしれない。 「勘違いってことは?」 俺が探って正してやらないと、埒があかなそうだ。 「多分、ない」 「うーん、そもそも妊娠するような心当りあるの?」 「ある」 おっと、これは雲行きが怪しいぞ。 「えーと…どうしたら子どもができるかは知ってるよね…?」 ちなみにありかちゃん、ハタチは越えている。 正確な年齢は知らないが、俺たちより年上だと言っていたから確実だ。 「当然だろう。性交渉によって卵子が受精し、その受精卵が子宮壁に着床」 「あ、もういいや黙って」 知ってたみたい。 …やばいな。六佑がどんどん白くなってきた。 「で、なんでそんなことになっちゃった訳」 溜息混じりに訊ねる。 ありかちゃんの今の状況が本当に相手の男を好いた結果であれば、俺は応援できる。六佑には悪いけどね。 けれど、そうでないのならば。俺も、隣で死にそうになってるこいつも、相手をぶっ飛ばす覚悟を決めるだろうし、最悪ぶっ飛ばすだけでは済まないかもしれない。 そんな俺たちの心配をよそに、ありかちゃんは普段と大して変わらない調子で話し始めた。 「うむ、実はな…」
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