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5: 「どこから来たんですか?」「どこに行くんですか?」 旅人同士の最初の会話は だいたい こんなもんだ。 「大阪からや 北海道回りで沖縄まで行くとこやねん」私は答えた。 「すごいっすね!」「俺達は東京っす」「もう1ヶ月北海道 旅してるっす」 若者二人は東京の大学生と専門学校生だった。 以後 大君と専君とする。 今夜は労働が無かったので、宿泊以外の提供は無かった。 私達に用意された寝床はトレーラーだ。 私達は唖然とした。 これじゃ道の駅にでも泊まった方がマシだと思った。 気を取り直して 私の用意したグランブルーで乾杯した。 交流を深め程なくして眠りについた。 次の朝は、日の出ともに始まった。 私達に与えられた仕事はゴミの撤去。 熊さんはこの場所でライダーハウスをやるそうだ。 ゴミとは不法投棄されたモノでデカいモノは車なんかもある。 手で持てるモノは手で それ以外はユニックで持ち上げた。 ユニックとはトラックに取り付けられているクレーンの事だ。 私に憑いていた霊と思われるモノ達がいつの間にか消えていた。 何となく居なくなった理由が分かる。 居なくなった理由は この場所のせいだ。 私には特に人より優れた能力は無いが、霊と思われるモノを見たり感じたりは出来る。 この場所に着いたとたん嫌な感じがしている。 こうゆう場所にはやはり何かがあるのだ。 まだ姿は見えないが かなり強力な悪意を感じる。 私に憑いて来たモノ達もこの悪意には近づけないのだろう。 私もこんな場所から一刻も早く立ち去りたい。 だが一度引き受けた仕事は放棄する事は出来ない。 気配は感じつつ姿は現せないまま1日が終わった。 因みに昼はコンビニ弁当とカップラーメンだった。 「昼は悪かったな 晩飯は美味い食堂に連れて行ってやるからな その前に温泉で汗流すべ」と言って熊さんは裏山の森の中へと入って行く。 私達は えっ?と思いながら熊さんの後について行く。 鬱蒼とした森を進んで行くと 自然に湧いている温泉へと着いた。 北海道では特に珍しい光景では無いが 大君と専君は初めての体験で大興奮している。 その顔を見て熊さんもご機嫌だ。
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