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怪談たろう君
火の玉
こんにちは、いや初めまして!僕は「怪談たろう君」と申します。
実をいうと今まで僕はとても信じがたい体験を沢山してきているのです。是非怖い物好きな皆様にもそれを知って頂きたく思い恥ずかしながら投稿させて頂きます。
誤字脱字のご指摘、罵詈雑言、誹謗中傷、随時受け付けておりますのでよろしくお願いします。

火の玉

それは僕がまだ小学生になってすぐぐらいの時でした。
父親と蛍が沢山見れる川辺に行こうってなりまして、肩車をして貰いながら川沿いの土手をゆったりと歩いておりました。
すると突然、後ろから草を踏みしめるようなペタペタペタといえ足音がして、それは一瞬で僕らを追い抜いて行ったんです。

チェック柄の白い甚平を着た僕と同い年ぐらいの男の子でした。

父親はその子に気付いていないのか鼻歌続行中。
その子はくるりと振り向きました。
僕はその瞬間両耳がキーンとして父親の鼻歌も、水の音も、鈴虫の囀りも、何もかも聞こえなくなってしまいました。
その男の子の顔は人間ではなく狐の顔に似ていました。最初は犬かな?と思ったんですが、後で調べてみると間違いなく狐の顔でした。
それはケタケタと笑っていました。
父親は僕の異変に気付いたのか、心配そうにジロジロと顔を覗き込んで来ていましたが、僕はそれどころでは無くずっと狐顔の男の子から目が離せませんでした。
すると耳鳴りの中で微かに声が聞こえました。
「ねえ、いっしょにいこうよ」
なぜか怖くはなくて、とても悲しい気持ちになりました。
僕は頭の中で「ごめん無理だよ」って何回も繰り返しました。
何回も何回も何回も

「どうした?気分でも悪いのか?」という声で目を開けると、父親が心配そうな顔をして僕を見ていました。知らない内に公園のベンチに二人で座っていたんです。
ふと川向こうを見ると赤い火の玉がゆらゆらと揺れていました。そしてそれは次第に暗闇の中へと消えていきました。
僕は良かった助かったんだと、父親に抱き着きました。するとベンチの裏手に顔がビリビリに避けた男の子が突っ立っていました。
「ねえいっしょにいこうよ」
とまた頭の中から声が聞こえました。僕はまた「無理!無理!無理!」と何回も頭の中で繰り返しました。
すると僕を抱いていた父親が「いっておいでーーー」と言ってケラケラ笑い出したのです。
今まで見た事がないくらい笑っていました。涙目になるぐらい笑っていました。僕は父親がめちゃくちゃ怖くなってその場から走って逃げました。早く母親に会いたくてめちゃくちゃに走りました。
そしてやっと家に着いたら、玄関先で母親が心配そうな顔をして待っていました。涙でぐしゃぐしゃになった僕を抱き締めながら母親が言いました。
「あんたどこの子な?もう遅かけんはよ家に帰りんさい!家のひとが心配しとっとよ!」僕には全く意味が分かりませんでした。母親の顔をまじまじ見ると黒いはずの目玉が両方とも真っ赤でした。
遠くでまたあの遠吠えが聞こえました。
僕はそこでもうダメだと思い諦めました。涙が止まりませんでした。父親が後ろから追いついて来ました。
顔を見ると全然知らないおじさんでした。母親を見るとこれもまたせ知らないおばさんでした。
とにかく公園まで戻る事にしました。なぜだか理由は覚えていません。そうした方がいいと思ったからだと思います。
公園に戻るといつもの父親が待っていました。ぎゅーっと抱き締めてくれました。そして父親は言いました。「坊や、うちの息子を見なかったかい?」父親の背後に赤い火の玉が燃えていました。

おわり

誤字脱字がありましたらよろしくお願いします。
それではまた会いましょう。



09/12 05:57
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