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怖い名無し
ロビンM
あのうロビンMさん連投しすぎです。
ほかの作品がさがって読みにくいです。 勘弁して下さい。
スレを立てたんで今後はこのスレに心行くまで傑作を投稿して下さい。
11/12 10:15
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▼[23]怖い名無し
わりぃ、アニキーとか言ってたの自演だったのか?
俺が知ってる馬鹿の仕業だっ思ってた

12/07 22:09
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▼[24]ロビンM
男性
やあロビンミッシェルだ。
皆の熱い要望で、
こちらに投下させていただくよ。
今回の怪談は別段怖くはないが、
身違に起こりえる不思議な奇談なので読んでみてくれ。

【勇者マモル】

夜中尿意を覚えて一階のトイレで用を足していた刹那、愛犬のマモルが普段出さない低い唸り声をあげていた。
マモルがいるリビングの窓際まで様子を見に行くと、裏の勝手口の辺りからヒソヒソと話し声がしていた。
耳をダンボーにしてよく聞いてみると、それは日本語ではなかった。
話し声、気配からして最低三人の外国人が人ん家の庭で何やら話しこんでいるようだ。

俺はそ〜っと最強の親父の部屋から日本刀を拝借してきた。
本物かどうか確かめようと刃先を軽く指に当てたらスパッと切れた。
「親父…マジのやつかよ…」

すると勝手口の方から、カチャカチャとノブを回す音がした。
入ってきた瞬間ぶった斬るか、いきなり電気をつけて脅かしてやるか、どっちがいいかなー?
なんて考えていると背後から…

『斬っちゃダメだよ、斬っちゃ…
何考えてんだよ。相変わらず馬鹿だな!お前は…』と声がした。
ハッとして振り返るとマモルがちょこんとお座りして、ハッハハッハ言いながら俺を見ている。

ロ「い、今喋ったのお前か?」
しかしマモルはクイっと頭を傾げるだけで返事をしない。

ロ「お、お前ってたまに喋るけどなんなんだよ一体…?」
その時、カチャンと鍵の回る音がした。
表ではよく解らん早口な英語?
で、テンションが上がっているのか先程より若干大きめの声がしている。
ロ「…ふん、泥棒野郎が。
ドアを開けた瞬間真っ二つにしてやんぜ!」

…しかし…
いつまで待ってもドアは開かない。

ロ「おかしいな、気づかれたか?」
そういえばさっきまでの話し声もいつの間にか無くなっている。
流石の俺も若干の恐怖を覚えながら勝手口のドアをそっと開けてみた。

誰もいない…

それもそうだ。
よく考えてみると、そこに人がいる筈が無い。
幅1m程の通路には大きな物置と花壇が道を塞いでいる為、家の中からしか裏口へは行けない様になっている、そこに人が入り込む事は先ずあり得ないのだ。
それに気づいた瞬間、ぞくっと悪漢が走り急に身体が動かなくなった。

ロ「…う…ぎぎ…ぎ…!」

『ヒャーハハハハ!』
突然暗闇の中に白い歯が浮かんだ。

『ヒャーハハハ!ユーサムライ?』
よくクラブで見かける様なガタイのゴツい黒人野郎が三人、俺を小馬鹿にしながら家に上がってきた。

ロ「…や、野郎!…ぎぎ…」
俺を素通りした三人は、よく分からない会話をしながら家の中へと消えていった。
声がなくなると、弾かれるように金縛りが解け俺はその場にへたり込んでしまった。
全速力で走った後の様な疲労感があり、立ち上がる事が出来ない。
二階には母親と妹達が寝ている。

ロ「…ち、畜生…あいつら何をする気だ…」
俺は腕の力だけで、廊下をズルズルと這いながら暗い階段の方へと急いだ。
すると、玄関の方からボソボソと話し声が聞こえてきた。

…マモルだ…
この声は間違いなくさっき聞いたマモルの声だ。
そして黒人達の声に混じって聞こえてくるその声は英語だった。

ロ「あ、あいつ一体何者なんだ⁈」
ボソボソと四人の話し声が数分間続いた。
俺はその間動かない身体で必死に這いづり、やっと玄関が見える所まで移動した所で信じられない光景を目の当たりにした。
なんと、愛犬マモルが青白い光を放ちながら宙に浮いていたのだ。
そして、まるで人間の様に身振り手振りを使いながら黒人達と意思の疎通を交わしている。
黒人達の姿は闇に溶けていたが、時折見せる白い歯がその存在を明らかなものにしていた。

ロ「…ま、ま、もる!」
俺の力無い声に一斉にこちらを振り返った四人?の顔を見ながら俺は意識を失い、気付けばいつもと変わらない朝だった。
玄関付近で寝ていた俺に悪態をついた妹達に昨日見た出来事を話すと、ゴミを見る様な目で素無視された。

しかし俺はこの時思った。
マモルはただ者では無い…
あいつが俺達家族を守ってくれた。
…マモルだけに…

いつもの様にフガフガ言いながら朝飯をがっつくマモルの背中を見ながら、「ありがとう…」
と心の中で呟いた事は言うまでも無いだろう。

悪魔を祓う犬種 パグ犬

マモルが生きてる限り、
我が家は平和に違いない… 【了】



12/11 19:12
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▼[25]名無し
男性
いいっすね♪また投下して下さい!気長に待ちます!てか、まもる何者!?
12/12 05:10
[P01A]
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▼[26]ロビンM
男性
>>25
暖かい言葉をありがとう。
糞みたいな一年だったが
君の言葉で救われたよ…

さて、マモルだがアイツの事は俺にもよく分からん。
仔犬の頃、美菜が貰ってきた犬だが、アイツの知能は俺を超えている可能性がある。
本文でも触れたが、パグという犬種は何か不思議な力があるのかも知れないな…
まあ兎に角、分かっている事は犬のクセに俺を見下しているという事だ。
12/14 07:41
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▼[27]怖い名無し
ロビンMのバイタリティは評価するが
文章、内容、構成はまだまだ稚拙で誉められたものではないと思う。
だから頑張って欲しいし、もう少し泳がせていたい。


12/21 08:53
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▼[28]ロビンM
男性
>>27
成る程、
期待してくれているようだな。
俺もいつの日か君を満足させる文章を書ける様に頑張るよ。
…ひひ…
12/22 04:34
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▼[29]ロビンM
男性
やあロビンミッシェルだ。
先程、暇潰しに書いた話だ。
まあいわゆる意味怖ってやつだな。…ひ…
自分的には中々の出来だと思うんだがどうだろう?


日曜日の朝っぱらから妻に揺り起こされた。
珍しく機嫌の良い妻。

なんでも三年間音沙汰が無かった息子からの手紙が届いたらしい。
生きてるのか死んでるのかさえ分からなかった一人息子、浩史からの手紙に妻は涙を流して喜んでいた。

警察でさえ居場所の糸口さえ掴めなかった程で、正直私達は半分諦めていたのだ。
やはり一人で都心に出したのは間違いだったと私達は悔いたが、生きている事が分かって本当に良かった。

私は妻から手紙を受け取り目を通した。


お父さん、お母さん。
連絡しなくてゴメンなさい。
話せば長くなるから今は無理だけど
日を改めまた必ず会いに行きます。
遠い所に行っちゃうこんな俺
を許して下さい。今思えば本当に
子供の頃から心配ばっかりさせて苦労かけました。

親愛なる両親へ。
また会える日をとても楽しみに
しています。
体調には十分お気をつけて。

借金が沢山出来た事はもうお父さん
にバレてると思いますが、
まとめて返す手段を見つけました。
直ぐに完済出来ると思います。

最後になりますが、
幼稚園の頃お母さんが買ってくれた
ウルトラマンのオモチャ。
無くさず今でも大事に持ってます。

乱雑な文章でごめんなさい。
浩史



妻は買い物に出かけた。
多分、今夜はご馳走が食卓に並ぶ事だろう。

しかし、私の目からは喜びとは違った涙が流れた。

【了】
01/10 03:25
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▼[30]ロビンM
↑は少しミスったよ。


日曜日の朝っぱらから妻に揺り起こされた。
珍しく機嫌の良い妻。

なんでも三年間音沙汰が無かった息子からの手紙が届いたらしい。
生きてるのか死んでるのかさえ分からなかった一人息子、浩史からの手紙に妻は涙を流して喜んでいた。

警察でさえ居場所の糸口さえ掴めなかった程で、正直私達は半分諦めていたのだ。
やはり一人で都心に出したのは間違いだったと私達は悔いたが、生きている事が分かって本当に良かった。

私は妻から手紙を受け取り目を通した。


お父さん、お母さん。
連絡しなくてゴメンなさい。
話せば長くなるから今は無理だけど
日を改めまた必ず会いに行きます。
遠い所に行っちゃうこんな俺
を許して下さい。今思えば本当に
子供の頃から心配ばっかりさせて苦
労かけました。

親愛なる両親へ。
また会える日をとても楽しみに
しています。
体調には十分お気をつけて。

借金が沢山出来た事はもうお父さん
にバレてると思いますが、
まとめて返す手段を見つけました。
直ぐに完済出来ると思います。

最後になりますが、
幼稚園の頃お母さんが買ってくれた
ウルトラマンのオモチャ。
無くさず今でも大事に持ってます。

乱雑な文章でごめんなさい。
浩史



妻は買い物に出かけた。
多分、今夜はご馳走が食卓に並ぶ事だろう。

しかし、私の目からは喜びとは違った涙が流れた。

【了】
01/10 03:29
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▼[31]冬のアザラシ
女性
オレハヒトヲコロシマシタ
シニマス サヨウナラ

縦読み↑↑
01/14 17:28
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▼[32]怖い名無し
男性
ロビンMさん早く連投して
02/11 05:58
[SN3P]
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▼[33]ロビンM
男性
やあロビンミッシェルだ。

>>32 …ひひ… 久しぶりに覗いてみたら嬉しい言葉が届いているな!ありがとう…もう少しで世にも恐ろしい愚怪談が完成するんで楽しみに待っていてくれ!…ひ…
04/02 00:42
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▼[34]怖い名無し
男性
ロビンミッシェルさん、待ち兼ねましたよ〜、新作楽しみにしております。
04/03 08:14
[SN3P]
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▼[35]ロビンM
男性
やあロビンミッシェルだ。

この世には人形に纏わる怪談がごまんと有るが、この話もその一つと言えるだろう…

人の手により丹精込めて作られた物には、時に不思議な何かが宿るのかも知れないな…ひひ…


【市松人形と夏美、時々おとん】


五歳の夏美には苦手な物があった。

それは二階の客間に置いてある市松人形だ。

この頃徐々に奇妙な物が見え始めていた夏美はこの人形に酷く怯えていた。

「 私この子嫌い! 」

「 もう、夏っちゃんは何で叔父さんがくれたお人形さんをそんなに悪く言うの? 」

「 だってこれ怖いんだもん… 」

「 何処が怖いのよー? 可愛いじゃないのぉ、そんな事言ってたら憲司叔父さん天国で悲しんでるわよー、ちゃんと大事にしてあげなさい。」

母の前ではコクンと頷いて見せたが、この人形の持つ異常さに何と無く気付いていた夏美はそれからも二階の客間へ近づく事は無かった。

しかし夏美と一卵性で共に生まれた美菜は、逆にこの市松人形をとても気に入っていた。

よく硝子ケースを開けては膝の上に置き、楽しそうに話し掛けたりもしていた。

この人形を七五三の記念にと我が家に送ってくれた叔父の憲司さんは心筋梗塞を患い、もうこの世には居ない。

特別憲司さんに懐いていた美菜は、そんな叔父をこの人形に移し換えていたのかもしれない。



ある晩夕食の用意をしていた母がテレビを見ている夏美を呼んだ。

「 夏っちゃん悪いけど二階のカーテンと雨戸閉めて来てくれない? 」

「 やだ!! 」

「 もう、お願い夏っちゃん!今お母さん手が離せないの、あなたお姉ちゃんでしょ? 早く行ってきなさい! 」

夏美は渋々ちびま○子ちゃんのCM中に二階へと駆け上がった。

二階はシンと静まり返っており、五歳の夏美には只々恐怖でしかない。

何時もは美菜と一緒なので平気なのだが今日は一人、この客間の前を通るだけで涙が出そうな程怖かった。

両親の部屋と子供部屋の雨戸を閉めカーテンを引く、後はあの客間だけ…

もう長い事この部屋へ足を踏み入れていない。

中には古い桐箪笥と立派な床の間があり、親父の趣味で高そうな掛軸と日本刀が数本飾られている。

あの市松人形も…

夏美自身も何故自分がこれ程までにこの人形に対して恐怖を抱いているのかよく分からなかった。

別に人形が動く訳でも無く、話す訳でもない、至って普通の和人形だ。

只、本能的にこの人形から発せられる異様な空気、気配が怖かったのだ。

「 もうCM終わっちゃう… 」

夏美は覚悟を決めた。

ギィ…

パチン…

スイッチを入れると三回点滅してから蛍光灯が部屋を照らした。

ヒンヤリした空気と木の匂いが鼻を突く。

横目でチラリと覗くと日本刀の隣りに硝子ケースが見える。

赤い着物を身に纏った市松人形。

夏美は意を決したかの様に脇目も振らず窓辺へとダッシュした。

網戸を閉める!

カーテンを引く!

任務完了!

ホッと安堵した拍子に見てしまった。

見なければ良かった。

硝子ケースの中で、市松人形が激しく頭を左右に振っていた。

音も無く。

一心不乱に頭だけが左右に揺れている。

悲鳴を上げようと大きく口を開くが、肝心の声が喉から出て来ない。

動けない。

立ったままの金縛り。

来るんじゃなかったと夏美の頬を涙が伝ったが、時すでに遅し。

蛍光灯の灯りが微妙な明るさを残しつつ点滅を始めた。

入り口のドアがゆっくりと一人でに閉まりかけている。

見なくてもいいのに自然と目が市松人形へと向いてしまう。

もう首の動きは止まっていた。

しかしその顔は此方を向いていた。

まるでペンライトでも仕込まれているかの様に人形の両目が赤く光っている。

蛍光灯に合わせるかの様にその赤い目も点滅を繰り返し始めた。

バタン!!!

ドアが閉まった瞬間、蛍光灯の灯りは完全に落ち部屋は真っ暗になった。



…キィィ…カタン…

暗闇の中で二つの小さな赤い光がユラユラと揺れている。

ズリ… ズリ…

来る、コッチに来る!!

ズリ… ズリ… ズリ…

夏美の足に何か硬いモノが触れた。

恐る恐る足元を見ると、小さな赤い光が二つ此方を見上げている。

「 お、おかあ…さん… ヒック… うう… おかあ… 」

夏美は動く事も出来ず、声を出す事すらも出来ない。

その時…
04/24 02:14
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▼[36]ロビンM



ギャイーーーーン!!

ギャイーーーーン!!

グラグラグラグラ、ガタン!!

背後の窓の辺りから謎の怪音が二回響いた後、日本刀が置かれている辺りで何かが倒れる音がした。

そこには灰色のオーラの様なモヤがグニャグニャと湧き出していた。

そのモヤは次第に人の顔の様な形に変化していった。

「 …お、お父さん? 」

それは紛れも無く昨年他界した父親の顔だった。

遠近法を完全に無視したその大きな顔の父の目は、足元にいる市松人形に向けられていた。

『 …おい憲司… それは夏美だ… 』

と、真っ暗だった部屋の蛍光灯がまた点滅を始めた。

足元を見ると夏美の膝に手を回している人形の頭が、また左右に激しく振られていた。

『 …憲司… もうお前は死んだ…美菜に憑きたいんだろう…?… それは絶対に許さんぞ… 』

ズリ… ズリ…

人形は夏美の足から手を離した後、ゆっくりと閉められたドアの方へと向かって歩き出した。

ズリ… ズリ…

『 …おい憲司… そっちに行くな… 美菜なら今日は友達の家にお泊りしてるから帰ってこんぞ… 』

ズリ…!

それを聞いた瞬間、人形の動きはピタリと止まりカタカタと此方を振り向いた。

『 …夏美… もう心配せんでいい… 憲司はワシが連れてゆく… 美菜には悪いがこの器も壊していく… 』

そう言うと父はドアの方へゆっくりと視線を移した。

ドアの前には呆然と立ち尽くし此方を見つめる不気味な日本人形。

次の瞬間…

バーーーーン!!!

突然、物凄い勢いでドアが開かれた。

「 な、夏美!さっきの音何?!大丈夫なの?!」

母親が慌てて部屋の中へと飛び込んできて、夏美を抱きしめた。

「 お、お母さん痛い、痛いよ…」

「 大丈夫なの?怪我は無い?!」

「 うん大丈夫… それよりお母さん、お父さんが… 」

夏美は日本刀が倒れている床の間を指さした。

「 お父さん? お父さんがどうしたの?!」

母には父の顔が見えて居ないのか、辺りをキョロキョロと見回している。

遠近法を無視した父の顔は先ほどより少しボヤけていた。

そして背後の壁に吸い込まれる様に少しずつ、少しずつ消えゆく父は最後にこう言った。


『… さらばだ… 夏美… 』





部屋は蛍光灯の点滅も収まり、異常なまでの寒さも無くなっている。

市松人形が入っていた硝子ケースは中で火でも焚いたかの様に黒ずんでいた。

倒れた日本刀を元に戻し、母に手を引かれて部屋を出る時、ドアに挟まれてバラバラに砕けている人形の一部が目に入った。

「 さっ、電気消すわよ 」

パチン…

「 ひっ!!」

部屋が暗くなった瞬間、夏美の後ろ髪を誰かが引っ張ったような気がした。

バタン!

母の体にしがみ付きながらゆっくりと階段を降りている時、一階のリビングからはサザエさんのエンディングテーマが流れていた…

【了】


04/24 02:19
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▼[37]怖い名無し
男性
少し鳥肌たった。面白かったよロビンミッシェルさん。ちびまるこ見逃してしもたのね。
05/01 15:35
[SN3P]
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▼[38]ロビンM
やあロビンミッシェルだ。

読んでくれたのか、サンクス!

どうも最近ここも投稿が激減しているようだが、君が見てくれている限りまた新作が書けたら掲載させて頂くよ…ひひ…

ではまた会おうブー!!(ブー太郎)
05/01 20:06
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▼[39]怖い名無し
読む読む。
楽しみに待ってますよロビンミッシェルさん。

最近の正統(?)な怪談ももちろん好きだけど、前の怒濤の連投ハチャメチャ系も好きだなあ。期待してます。


05/06 04:36
[SN3P]
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▼[40]ロビンM
やあロビンミッシェルだ。

↓氏、…ひひ…サンクス!

君のお蔭で書く意欲がビンビンに湧いてきたよ!…ひひ…
05/06 22:56
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▼[41]ロビンM
間違えた!

↑↑、だな…
05/06 22:57
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▼[42]怖い名無し
男性
いやあ、みなぎる決意に期待も膨らみますよ。ボウズ共々楽しみにしとります。
05/10 06:08
[SN3P]
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▼[43]怖い名無し
ロビンさんとこげさんがあちらでも活躍してるw
がんばってください
でも正直なところ、こっちで投稿して欲しいです
05/10 11:48
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▼[44]ロビンM
麗子OF THE DEAD


今夜は月が綺麗だ。

昼間の茹だる様な暑さがまるで嘘だったかの様に、この山の高台はヒンヤリとして解放的で涼しい。

俺は自宅から車で三十分程離れたとある外人墓地にいた。海に面しているせいか、潮の香りが混じる突風が時折ザワザワと周りの木々をしならせながら、この異様な雰囲気を更に盛り上げてくれている。

「やべ、充電20%きってんな…」

パシャリ!

目下に広がる綺麗な夜景を写真に数枚収めた後、俺は心の中で軽く覚悟を決めた。

振り返るとやはり先程と同じ光景…

俺の愛車クラウンの中で怯える香織と龍。

麗子はといえば長い黒髪を振り回しながら、ロックされたドアをこじ開けようとバンバン車体を叩いたり、何語か分からない言葉で喚きながらノブをガチャガチャさせている。

怖い…正直…

突如、豹変してしまった麗子。

原因は分かっている。

外人墓地に「出る」と云う噂を聞いた俺達は、真夏の深夜にわざわざこんな所まで肝試しに来たんだ。

しかし車で周辺を軽く見て回ったものの、比較的街灯の多いこの墓地は洋式の四角い墓石がただ規則正しく並んでいるだけで、これといった異変も怪現象も起こらなかった。

すると苛ついた龍が、事もあろうにその墓石の中の一つに中指をおったてながらジョロジョロと小便を引っ掛けてしまったんだ。

慌てて止めに入った麗子だったが、突然胸を抑えながら苦しそうにしてうずくまり、一転ゲラゲラと笑い出したかと思えば、その墓石の前の土を素手で掘り始めた。

実はもうその時から麗子は何処の国の言葉か分からない、理解不能な叫び声を上げていたよ。

突然の事に呆気に取られている俺達はどうする事も出来ずに唯その光景を暫く眺めていたが、龍が麗子の名を呼んだ瞬間、土を掘る手がピタリと止まり、此方を振り返ったんだ。

誰だよお前?

俺の心の声だ。

まるで別人としか言いようがない程に麗子の顔は変形していた。

細かった筈の目はこれでもかと見開き俺達を睨みつけ、口からは涎と共に大量の泥がボタボタと滴っている。喰ってたんだよ、泥を…

次の瞬間、体に大きなバネでも入っているかの様にビヨン!と跳び上がった麗子は、あーあーと奇声を発しながら此方へと向かって走って来た。

恥ずかしながら腰を抜かしてしまった俺はその場から動けなかったが、香織と龍はあの走塁王「福本豊」顔負けのダッシュでクラウンへと逃げ込んだ。

狙いは小便を引っ掛けた龍の様だ。

何故なら麗子は座り込む俺に見向きもせず、二人の後を追ってクラウンのボディをバチバチと叩き始めたからだ。

買ったばかりの新古車、一般人の夢クラウンをバチバチと…たまに鋭い蹴りも何発か入っている。

正直、俺は麗子の変貌ぶりや龍の身の安全よりも愛車クラウンがとても心配だった。白のボディーが泥で汚され、ミラーが飛び、車体が変形していく様をとても直視出来なくなった俺は、ブラックメンソール1ミリを吹かしながらパノラマに広がる綺麗な夜景に目を移したといった所だ。

すまん、前置きが長くなってしまったな!! しかし、この続きを書くのはまた後日、暇が出来てからにしようと思う。

何故なら酒が回って少し眠たくなってしまったからだ!明日も早いので次回を楽しみにしていてくれ!

【続く】
11/26 16:46
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▼[45]怖い名無し
憑依、麗子OF THE DEAD 続編


「 あ、流れ星!」

願い事をしようと素早くスマホを取り出したものの勿論間に合う訳も無く、俺は充電が15%まで減ってしまった電話を再度内ポケットに突っ込んだ。

龍がヘマをしたせいで突如豹変してしまった麗子。

別人の様に顔を変え、髪を振り乱しながら他国語の奇声を上げて俺の愛車の破壊をいまだに続けている。

「 あーあ、ボンネットの上に乗っちゃったよ…」

ドアロックが解除出来ないと悟ったのか、あろうことか麗子はブロックを抱えてボンネットの上に這い上がり飛び跳ね始めた。

まさかその手に持ったブロックでフロント硝子を叩き割るつもりだとでも云うのか…

「 ぐす…」

突如、鼻が詰まったかと感じた途端俺の頬を涙が伝った。嬉し涙とも悔し涙とも違う、何か別の感情がその時俺の胸を支配していた。

庶民の夢クラウン

月四万の三年ローン

保険屋の番号をスマホでチェックする。充電は既に8%を表示している。

恐らく車の中で怯えている香織と龍には俺のこの気持ちは分かるまい。お前らの置かれている状況も中々にハードかもしれないが、今の俺に比べたら大腸菌とビッグフット程の差があるだろう。

「 …ひひ…」

遂に麗子がブロックを硝子に投げつけた。

しかし鈍い音をさせ跳ね返ったブロックがまともに麗子の体にブチ当たり、ドシャリと後ろへと吹っ飛んで行った。

「 ざまぁみやがれ…ひひ…」

心の中で軽く毒づいた後、俺は少し後悔した。

確かに今の麗子は洒落にならない。得体の知れない何かに支配されているのは間違いないだろう。

しかしそれを笑うという事は香織の親友を笑うという事だ。俺は一人心の中で反省した後、後ろのポッケから特殊警棒を取り出した。

俺はいままで運動部に所属した事も無ければ、武術なども習った事は無い。しかし四歳から喧嘩という実戦で戦って来た経験と知識と度胸は持ち合わせているつもりだ。

取り憑かれているとはいえ所詮は女。ここ十年程は連戦連勝のロビン様がこんな基地外に負ける理由は一つも無いのである。

「 おい!麗子!!」

返事は無い。

奴は先程の一撃でボンネットの向こうへとすっ飛んでしまってから、気を失ってしまったのかまだ姿を現さない。

「 い、今の内に逃げるか…」

俺は警棒を伸ばしたまま、いつでも殴りかかれる体制を取りジリジリと愛車クラウンの元へと近づいていった。

そこでふと妙な違和感に気付いた。

静かだ…

先程まであった潮風に煽られていた木々の音が消えている…

「 …………」

クラウンを見ると龍と香織が車の中から、俺の方を指差して大声で怒鳴っているように見える。

無論、窓が閉まっているので奴等が何を言っているのかは全く分からない。

首元に妙な冷気が走る。

後ろ…?

もしかして龍達は俺の後ろを指差しているのか?

ギャーギャー!!

振り返ろうとした時、突然左手の森から数羽の大きな鳥が飛びたった。

「 ち、ビビらせんじゃねぇよこの野郎!!!」

俺は鳥に石を投げてやろうと足元に目をやり屈み込んだ。その時左目の視界の隅にそれを捉えたのだ。

白い裸足の脚

それは俺のすぐ後ろに立っているようだ。

「 ……麗子…か…?」

俺は瞬時にそれが麗子だと見抜いた。

しかし残念な事に武器の特殊警棒は石を拾う為、先程ポッケにしまい込んでしまっている。

これは素手の肉弾戦に切り替える必要があった。

麗子は卑怯にも俺の背後を取っているものの、いつでも攻撃が出来ると気を抜いている筈だ。幸いこちらが気付いている事はまだバレてはいない。

喧嘩屋の俺が取る行動はただ一つ、ノーモーションでの上段後ろ回し蹴りだ。もうこれしか無い!!

「 うりゃーー!!!」

ドスウ!!!

決まった!

モロに首に入った!

ドシャリと倒れ込む音がして、すかさず俺は麗子に馬乗りになりトドメの拳を振り上げた。

誰だよお前…

俺の心の声だ。

月明かりが照らし出すその顔は、麗子とは似ても似つかない汚らしいオッさんだった。

いや只のオッさんでは無い。こいつは黒人だ、しかもゴリゴリのやつだ。

そいつは白目を剥き、口から血と共に黄緑色の液体をドクドクと吐き出している。

しかも糞全裸!!

「 胸毛気色悪い!!!(゚Д゚)」

俺は本気の一発をそいつの顔面に振り下ろした。

グシャ!っと顔が潰れ、そいつはピクリとも動かなくなった。

「 …………」


ジャリ… ジャリ… ジャリ…


俺は肩で息を整えながらも、背後から近づいて来るその足音に気付いていた。

どうやら一人では無い。


ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ…

振り向くと、街灯の下から墓石の細道をこちらに向かって歩いてくる数人の男。いや女もいる。

そいつらは何故か皆全裸で、頭を斜めに傾け、両手をこちらに向けながらのスタイルでアーアー言いながらゆっくりと歩いてくる。

「 はいはい、ゾンビゾンビ!」

俺はポッケからまた特殊警棒を取り出し、冗談の様なこの展開に本気の怒りをおぼえた。

「 てめーら!ここはジャパンだぞ!! ゾンビは他国でやれ、コンちくしょーが!!!」

完全にキレてしまった俺は、これが夢であってくれと願いつつもそいつらに向かって殴りかかるのだった…


【続く】
11/27 15:46
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▼[46]ロビンM
軍服の男


この話を聞いたのはもう何年も前になる。

付き合いたての二人が深夜のドライブデートを楽しんでいた。

とにかく早くキスを決めたい彼は夜景が見える高台へ行こうと提案した。

彼女も了解し、暫く山道を登っていたが、どこでどう道を間違えたのか辺りは見知らぬ景色に変わっていた。

免許を取得して間もない彼は軽くパニックになり、とにかく車をUターンさせようと方向転換している時に操作を誤り後ろタイヤを脱輪させてしまった。

仕方なくJAFに連絡を入れ待つことにした。

折角のデートが台無しだと彼は凹んだが、幸い彼女の機嫌は損なわれておらず、まあこれも思い出の一つになるかと二人で笑いあっていた。

ザック、ザック、ザック、

二人が座る歩道の裏手から足音が聞こえた。

見ると、暗くて気づかなかったが裏の林には奥へと続く舗装されていない道があり、目を凝らすと誰かが歩いて行くのが見える。

ザック、ザック、ザック、

「 何があるんだろ?」

彼女がそう言いながら立ち上がり歩き出した。

彼氏は慌てて後を追い、彼女に引き返すように説得するが彼女は気になると言ってきかない。

仕様がなく彼は彼女の後ろに続く事にした。学生時代に柔道でならした経験がある彼は、もし何かあっても彼女を連れて逃げきるぐらいの自信はあったのだ。



数百m程歩いたところで道が開け、小さな廃寺が姿を現した。

そこは周りを高い木々で囲まれ、狭い空間に隔離されているかの様にひっそりと建っていた。

朽ちた瓦屋根、砕けた門柱、腰の辺りまで伸びた雑草等が、その長年の不在を物語っていた。

「 さっきの人だ…」

彼女の視線の先を見ると、門柱の横手にある小さな沼地の中に、下半身を水に浸からせた男が立っていた。

大きな男だ。

背を向けているが、カーキ色の軍服を身につけている様に見える。

彼は身動ぎもせず、ただジッとそこに立っている。

彼は必死に彼女の手を引き、帰ろうと諭したが、彼女は何故か帰るのを拒んだ。

暫くすると、林の向こうから微かなエンジン音が聞こえた。どうやらJAFが到着したようだ。

沼地を見ると先程の男は忽然と消えていた。



一週間後、連絡の取れなくなっていた彼女から電話があった。

酷く怯えている。

あの日以来、毎晩のように夜中に上下カーキ色の軍服を着た大男が枕元に立ち、自分に話しかけて来るという。

電波状況が悪いのかプツプツと妙な雑音が邪魔をする。

憔悴しきっているのか彼女の声も掠れており、途切れ途切れで何を言っているのかよく分からない。

心配になった彼氏は翌日に彼女のマンションを訪れたのだが、既に不在でその日から行方が分からなくなった。

そして捜索願いも虚しく、一週間後彼女は変わり果てた姿で発見された。

第一発見者は彼だ。

心当たりのある最後の場所に彼女はいた。

あの廃寺の沼に沈んでいたのだ。

水を含みブヨブヨに膨れ上がった顔の目玉は抜き取られており、何を見たのか…彼女は恐怖で引き攣った状態のままで固まっていた。



… く…ぞ…

深夜、何者かに髪の毛を引っ張られる感覚があり彼は目を覚ました。

キーンと耳鳴りがし、体が思うように動かない。

… く…ぞ…

暗闇の中、彼の顔をあの大男が見降ろしていた。

遮光カーテンで全く光が無い筈の部屋に、ハッキリと浮かび上がる軍服姿の男。

… く…ぞ…

あの時と違っていたのは軍服がカーキ色ではなく、赤色だった。

そしてまた口元が僅かに動く。

… くぞ…

男の目玉は半分飛び出た状態で、ギョロギョロとまるで生き物の様に蠢いている。

ポタポタと上着から滴る血の様な物が彼の顔に落ちてくる。

また口元が動いた。

…いくぞ…

…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…



その話を俺にした数日後、彼は行方不明になった。

【了】
11/28 02:42
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▼[47]ロビンM
みさき荘


俺が小学六年の時に、場所は忘れたが家族全員揃って海水浴に出かけたんだ。

一泊の予定で泊まった民宿の名は今でもはっきりと憶えている。

宿名を「みさき荘」といった。

古い建物だ。

いくらシーズン中で部屋が取れないとはいえ、こんな何十年前から建っているのか分からないボロい民宿に決めるとは、さすがに俺の親父だなと今になって思う。まあ、ペットOKの宿がそこしか無かったのかも知れないが。

しかも思い立ったら即行動という親父の計画が裏目に出たのか、その日の海は大荒れでとても泳ぎに出れる波では無かった。

さすがは俺の親父だ。

「 あーあ、もう最低!!」

窓から見える高波に癇を発し、妹の美菜が拗ねてブラウン管テレビのチャンネルを回した。

ガチャガチャガチャガチャ

『 あーーー(´Д` )!いくーーー!!』

なんという事か、突然俺達家族の目の前で、裸の男女が繰り広げる18禁映像が残酷にも鮮明に移し出されたのだ。

『 あーーー(´Д` ) あ、あ、あ、いく、いく、いっくーーー!!!』

チャンネルを回していた美菜の右手はショックの余りカタカタと震え出し、目を見開き、大きな口を開けたままで固まってしまった。

無理も無い。

小学校に上がったばかりの純真無垢でいたいけな少女が、目の前で繰り広げられるこんな卑猥な映像に耐えられる訳もない事はあのジミー大西氏でも分かる筈だ。

しかし有料チャンネルの筈が一体何故…? 一つの疑問が残る。

恐らく前の宿泊客が金を入れたまま帰ったのか、単にテレビの故障なのかは残念ながら今もって解けない謎だ。

「 お、おまえ達は部屋で遊んでいなさい… 絶対に外にでるんじゃないぞ! お、お父さん達は風呂に入ってくるからな!」

親父はバツが悪そうにそう告げると、母親を連れてそそくさと部屋を出て行ってしまった。

『 あーーー(´Д` )!!いく、いくう、あっはーーーん♡』

…プツン!!

便所へ行っていた夏美がいつの間にかテレビの側に愛犬マモルを抱っこしながら立っており、ニヤニヤしながら電源のツマミを押した。

「 兄貴ー、私知ってるよw この人達ってエッチな事してたんだよねw」

この美菜と同じ顔をした夏美は、双子の姉の方にあたる。美菜とは少し性格が違い、負けん気が強く、やたら喧嘩も強く、曲がった事が大嫌いな武闘派だ。

多分、親父の血を多めに引き継いでいるのだろう。

「 おい夏美!そんな事より美菜を運ぶの手伝え!」

美菜は先程のショッキング映像のせいで、正座をしたまま気を失っているようだ。目が逝っている。

カビ臭い布団を引き、よいこらしょと二人掛かりで美菜を運んでいると、一階の方から親父の怒号が響いてきた。恐らく宿主に文句を言っているのだろう。



「 あーあ、折角海に来たのになんか勿体無いなぁ… 」

夏美が窓の外を見つめながら溜息をついた。

ここから見える海は相変わらず荒れており、空は灰色で小雨がパラパラと舞っている。風も強いようで窓の隙間からピューピューと音が聞こえる。

「 ねぇ海行こうよ兄貴!泳がなかったらいいんでしょw?」

「 ば、馬鹿かお前?!親父に見つかったらシバかれんのは俺だぞ!駄目に決まってんだろ!」

「 はぁ?何ビビってんのよ兄貴w 大丈夫だよ、ちょっとだけだから!お父さん達がお風呂上がってくるまでに帰るからさ!ね、お願い!」

「 だから無理なんだって!しつこいんだよお前は!さっき部屋から出るなって言われただろ!」

俺は幼い頃から親父のゲンコツの威力を体で覚えさせられていた為に、夏美のこの暴言は命を張ってでも止めなければならなかった。しかし…

(*`へ´*)

そこには指をポキポキと鳴らしながら、現役時代の的場浩司並みのガンを飛ばしている夏美がいた。

【続く】
12/02 21:10
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▼[48]ロビンM


数分後、俺と夏美は海岸沿いの砂浜に並んで立っていた。

「 …波、すごいね…」

「 ああ、近くで見るとすげーな!」

『 本日は高波のため、遊泳禁止となっております… 繰り返します… 本日は… 』

丸太に括り付けられたスピーカーから、無機質な声が風に乗って聞こえてくる。

ザザーーー…

ザザーーー…

俺達よりも遥かに高い波が幾度も打ち寄せては、また引いてゆく。

ビュオーーー!!…

ザザーーー…

「 あっ!!」

強い風に煽られて夏美が被る白くツバの広い帽子が飛ばされ、うねる波の中へと消えていった。

ビュオーーー!!…

「 お、おいヤバイだろ、あれ母ちゃんに貰ったやつだろ!!」

ビュオーーーおえおオうー!!…

「 …ちょっと兄貴静かにして!」

「 えっ?」

ビュオーーおえおえオあオお!!…

「 なんか風の音とは別に変な声みたいなの聞こえない?」

確かによく風の音を聞いてみると風の音に混じって呻き声の様なものが… しかも一人ではなく、大勢の人間が一斉に呻いているように聞こえる。

ビュおおおえおおオオおおおおオオおおおおオオおおえあおオオおおおおオオおおおおオオおおおおオオおえおお!!!

「 ひっ!!」

「 あ、兄貴あれ!!」

夏美が指さしたのは俺達が泊まっているあの民宿みさき荘だった。

「 えっ、何だ?何があるんだ?」

目の悪い俺はオデコに掛けていた眼鏡をかけて、先程俺達が覗いていた二階の部屋を見た。

すると窓越しに真っ白な服を着た髪の長い女が此方をジッと見つめていた。

「 だ、誰だよあれ?か、母ちゃんかな?」

「 違う…お母さんあんなに髪の毛長くないもん、兄貴、あの人の事あんまり長く見ない方がいいよ…」

「 じゃ、じゃああれ誰だよ?なんで俺達の部屋にあんな女がいるんだ?もしかして旅館の人かな?」

「 だから違うって!!」

ビュオーーーおえおオオおおおおオオおおおおオオおえおお!!!

「 うわああ!!何だお前?!」

再度、強い突風が吹き、慌てて夏美の手を掴もうとした時にそいつは後ろに立っていた。

腰まで伸ばしたびしょ濡れの長い黒髪。ビッタリと体に貼りつく白いワンピースを着た女。

顔は生気の無い土色、目は窪み、口は欠伸をした時の様に大きく開かれていた。

「 うわあああああ!!」

ザザーーー!!…

「 きゃあ!!」

次の瞬間、夏美は人形の様にパタリと倒れそのまま一瞬で波の中へと引き摺られて行った。波から伸びてきた幾つもの長い「手」によって…

「 夏美ーー!!!」

俺は慌ててTシャツを脱ぐと、パンツ一丁で荒れる海の中へと飛び込んだ。

「 どこだ?!どこだ夏美ーー!!」

泳ぎにはかなりの自信があった方だが、自然が作りだす大きな力の前には全く歯が立つ筈も無い。何度も波を被り大量の塩水を飲んで噎せて涙が止まらなかった。

ものの数分で体力を奪われた俺は、兎に角力の続く限り夏美の名前を叫び続けた。

「 ……に…きぃ…… 」

「 !!!」

もうダメだと諦めかけた時、微かに夏美の声が聞こえた。

「 どこだ?!どこにいるんだ夏美ーー!!」

辺りを見回していると漸く波の隙間に夏美の姿を捉えた。

既に波と塩水のせいで殆ど目は開いていないが、最後の力を振り絞って夏美の元まで必死で泳いだ。もうそれがクロールなのか、平泳ぎなのか、犬掻きなのか分からない無茶苦茶な泳ぎ方だったと思う。

何度も波に押し流されそうになりながらも、あと少しで夏美に届く所まで来た。どうやら夏美は遊泳許可区域を示す丸いブイに掴まっているようだった。

夏美も必死なのか、顔を顰めながら必死でそれにしがみ付いている。

だが夏美を抱き締めた時にその黒いブイの異変に気付いた。

「 …な、夏美… お前それ、何にしがみ付いてんだ…?」

「 ………… 」

どう見てもそれは人間の頭だった。

夏美の二の腕にまで巻き付いた長い黒髪は先程のあの女である事は間違いなく、ゆっくりと此方を振り返った女の窪んだ目をみた瞬間、天地が逆転した感覚に襲われ、そのまま俺の意識は飛んでしまった…





わん!わん!わん!フガ…

わん!わん!わん!フガ…

「 …ん…? ま、マモル…?」

「 良かった!兄貴目ぇ醒ましたよお父さん!!」

「 お、本当か美菜!チッ、このガキャ心配させやがって!!」

ガツン!!!

海岸で目を醒ました瞬間、親父の硬いゲンコツによりまたも意識を失った。



「 …ん…?」

再度目を醒ましたのは夜の七時を回った頃だった。

ズキズキと痛む頭を押さえながら隣りの部屋を覗くと、俺以外の全員 (マモル含む) が夕食を食べながらテレビを見て笑っていた。

「 えっ、夏美!おい、お前大丈夫なのか?!」

「 …………?」

俺は布団から飛び出し、呑気に焼き魚を食っている夏美にしがみ付いた。

ドグッ!!

「 痛っ!!(´Д` )/ 」

重い肘を腹に貰った。

「 やめてよ気持ち悪いわね!大丈夫って何よ?それはこっちの台詞じゃないバカ兄貴!!」

「 …へ?」

そろそろ書くのにも疲れてきたので、夏美がいう事をザッと要約するとこうだ。


まず、海岸に夏美は行っておらず、親父と母ちゃんの後について風呂へ行っていた。

三人で部屋に帰って来ると俺の姿がなく、マモルが窓際でクルクル回りながら外を見ろというので見たら俺が一人で砂浜を歩いており、波に呑み込まれるのが見えた。

昔、ライフセーバーの経験がある親父がすぐ海に入り俺を助けた。

親父が追い付いた時、俺はブイに捕まり既に意識を無くしていた。

と、まあこういう事らしい。


「 マモルに感謝しとけよロビン!助けんのが後もう少し遅れていたらお前は完全にサメの餌になってたんだ!わははは!」

酒の弱い親父が熱燗で赤くなった顔を崩して下品に笑っている。

マモルを見ると、テレビを見ながらまるで「気にすんな」とでもいいたげに尻尾だけをクルクルと回している…

なんか納得いかない

いや、全然納得いかない

もしかすると俺は頭がおかしくなってしまったのだろうか?

あの時確かに夏美は俺と一緒にいた。砂浜に立ち、一緒にあの女も見た筈だ。

しかしあんな目に会った筈なのに、夏美は今何事も無かったかの様にマモルの背中に顔を押し当ててモフモフしている。

「 やはり俺が間違っているのか…」

これ以上考えると腹が立って来そうなので、もう考えるのはよそう。

「 大体こんな薄汚い、気持ち悪い民宿なんかに泊まるからこうなるんだよ…ブツブツ…」

地獄耳の親父がピクリと反応した。

ぐぅ〜

腹が鳴った。

気持ちを切り替えて俺も晩飯に参加しようと立ち上がった時に口の中に違和感があった。奥歯に何かが詰まっている感覚。

なんだ?

人差し指と親指でそれを摘み、ゆっくりとそれを引き出す。


「 ぎゃーーーーーー!!!」


俺は本日三度目の気絶をし、翌朝チェックアウトの時間まで一度も目を醒ます事は無かった。

【了】
12/02 21:11
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▼[49]ロビンM

あけてよ

年も押し迫ったとある深夜、店の後片付けを終えた俺は白い息を吐きながら家路を急いでいた。

雪がチラついている。寒い…

片側四車線の幹線道路。

明日も十時起きで仕事の為、薄っすら白くなりかけている歩道を足早に歩いていると、前方から誰かが歩いて来るのが見えた。

大体この時間に歩いているのは酔っ払いのオヤジか水商売の女ぐらい… しかし此方に向かって来る者に半端ない違和感を感じた。

こんな時間に?

どう見てもランドセルを背負った小学生くらいにしか見えない女の子が、楽しそうにピョンピョンとスキップしながら近付いてくる。

黄色い帽子で目の辺りは隠れているが、口元は笑っている様に見える。

その女の子は真っ直ぐに前を見ながら、俺など全く眼中にないといった感じですれ違った。

俺はもう一つの違和感に気付き、「はっ!!」として直ぐに後ろを振り返ったが、何故かたった今すれ違った筈の女の子がいない。

消えた?

もう一つの違和感。それはあれ程ピョンピョンと跳ねていたのに有るべき筈の「足音」が無かったのだ。

と、次の瞬間。キィーーーー!!

ドカン!!!

俺の目の前で白いセダンの乗用車が急ブレーキを踏み、後輪をスピンさせながらガードレールへと激突した。

乗用車に駆け寄り運転席を覗くと、割れたフロントガラスの向こうに頭から血を流し放心状態になっている運転手が見えた。

とりあえず救急車を呼ぼうと携帯をいじっていたら、ドアが開きヨロヨロと運転手が降りてきた。そして彼はガタガタと震えながらこう言った。

「 ど、道路に飛び出してきた子供はどこだ?!」

すぐに道路と車の下を確認してみたがそんな子供は居ない。さっきのスキップしていた小学生が脳裏に浮かんだが、兎に角救急車を手配した。

家に帰った後、何か妙な胸騒ぎがして震えが止まらなかった。

風呂に入り、ベッドの中で目を閉じても女の子のあの楽しそうな表情がハッキリと目の裏に焼き付いて離れない。そしてやはり寒い…

ピンポーン

「 こ、こんな時間に誰だ?」

夜中三時を回ってから訪ねて来る者などいる筈がない。

そーっと足音を消しながら玄関まで行ってみると、ドアの向こうから口笛を吹く音が聞こえた…

超下手くそな口笛。

ピンポーン

「 ………… 」

ピンポーン

「 ど、どちら様?」

ピンポーン

「 ………… 」

恐る恐るスコープを覗いて見たが誰もいない。いや、いる!下の方に黄色い帽子が見えた。アイツだ!!

口笛が止んだ。

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

突然、物凄い勢いでドアを押されて俺は焦って後ろに飛び退いた。

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

あけてーーー

あけてーーー

ドアノブがガチャガチャと左右に激しく回っている。

あけてーーー

あけてーーー

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ…

ガチャン…

施錠した筈のドアがゆっくりと開く。

ガチン!!

チェーンをしていたお陰で数十センチ開いた所でドアは止まった。

ねぇ、あけてーーー

あげてよーーー あけでよーーー

「 も、もうやめてくれ!」

女の子はドアの隙間から手をねじ込んできた。その手はグッパグッパを何度も繰り返している。

ねえ、あけでよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

女の子の声が急に低い男性の様な声に変わった途端、パタリと静かになった。

ドアも閉まり、何事も無かったかの様に静まり返っている。恐る恐るドアスコープを覗いてみたが誰もいないようだ。

「 良かった… 」

安堵したと同時にすぐ後ろから聞こえた。

ふぅん…

ため息の様な掠れた声。

ゆっくり振り向くと、女の子の小さな手がギュッと俺のズボンを掴んでいた。

いたいよーーー

いだいよーーー

よく見ると黄色い帽子は所々破け、黒く汚れている。生気の無い肌、鼻は削げ、紫色の唇からは赤い血の筋が顎まで伸びていた。

そして足元を見ると血黙りが出来ていた。女の子には右足が無かったのだ。

その後は憶えていない。



翌日、例の事故現場を通りかかった時に全ての謎が解けたような気がした。

へしゃげたガードレールのすぐ傍に花が添えてあり、電柱にくくりつけられた白い看板にはこう書かれていたのだ。

『 ○月○日、○時○分、歩行者とバイクによる死亡事故がありました。目撃された方、こちらまで情報をお寄せ下さい。』

「そうか、あの子はここで亡くなっていたのか…」

視線を感じて反対側の歩道に目をやると、黄色い帽子を被った半透明の女の子がガードレールを乗り越えて此方にスキップしながら走って来るのが見えた。

いや、やっと分かった。あれはスキップでは無く片足でケンケンをしているんだな…

「 あ、危ない!!!」

キーーーー!! ガシャン!!!

【了】
12/04 20:54
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▼[50]ロビンM
白昼夢

イチパチを打っている俺の三台隣りの席で、スキンヘッドにサングラスというスジ者丸出しの出で立ちをした親父が台を蹴ったりゴンゴンと小突いたりしている。

「 畜生、出ねえなこの台は!!」

ガン!ガン!ガン!

周りの客は巻き込まれるのを恐れてか、ソソクサと違うレーンへと移動を始めた。

しかし妙な事に席を立つ内の何人かは、俺の方を見ながら怪訝な表情を浮かべている。…気の所為か…?

ガシャ嗚呼アアアン!!!

言ってる間に、遂にハゲが調子に乗って台の硝子を割っちまった!

慌てて集まってくる従業員達。

「 なんじゃこの台は?!二万も突っ込んで一回も出ねえイチパチが何処にあんだよクソッタレ!!!」

身長二mをゆうに越える凶暴なハゲが従業員達に喰ってかかる。

ガシャアアン! ガシャアアン!

正にゴリラだ。

両腕にしがみ付いた従業員達を軽々と振り回しながらウッホ、ウッホとレーンを練り歩き、力尽きた従業員を一人ずつ振り飛ばして行く。

ガシャアアン! ガシャアアン!

「 こっち来んじゃねぇよ!」

ゴリラは一頻り店内を練り歩いた後此方に向かって戻ってきたのだ。両腕にはまだ三人の従業員がぶら下がっている。

だがしかし俺の台は確変中だ。絶対に今邪魔をさせる訳にはいかない!

俺は後ろポッケに忍ばせている特殊警棒に手をやり、何時でも攻撃が出来る体制を整えた。

ウッホ! ウッホ!

ガシャアアン! ガシャアアン!

更に二人が飛ばされて、ぶら下がっている従業員は遂に一人となった。

店長だろうか?

必死の形相でゴリラに振り飛ばされまいと懸命にしがみ付いているが、ズレた眼鏡とバーコード禿げに刺さった硝子片が妙に痛々しい。

彼方此方から上がる悲鳴や怒声にも耳を貸さず、既に野生の猛獣と化した男(ゴリラ)は、はだけたカッターシャツの前から覗くジャングルの様なモジャモジャ胸毛を隠す事もなく雄叫びを上げた。

うおおおオオっホオおお!!!

「 あっ!!」

カシャアアアアアン!

店長の丸眼鏡がゆっくりと空中で三回転した後、地面にぶつかり粉々に割れた。と、その時だった。

ぎゃああああ嗚呼ああ!!!

突如、店長は断末魔の様な雄叫びをあげ一瞬で上着が消し飛んだ。

髪は逆立ち、赤く紅潮した顔、首、胸、腹、しかも頭からは沸騰したかの様にモクモクと湯気が上がっている。

「 おまえはボクを怒らせた!許さない!!!いいいいい!!!」

まるでカメハメ派前の「亀仙人」かの如く、ゴリゴリに隆起した筋肉をペシペシと両手で叩きながら一歩ずつゴリラとの距離を縮めて行く。

その手にはいつの間に用意したのか鋭いタガーナイフが握られていた。

左右の目はギョロギョロと生き物の様に動き、ほくそ笑みながらそれは正に秋葉原通り魔事件の「加○」を思い出させる程に完全に逝っている。

「 負け組は生まれながらにして負け組なのです、まずそれに気付きましょう。そして受け入れましょう!」

店長が意味不明な言葉を口にした瞬間、ゴリラの強烈な平手が店長の顎全体を捉えた。

グルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグル

ブチッ!!

ガシャアアン!!!

店長の首はもの凄い速さで回転した後、骨が耐え切れずに千切れてカウンターの商品棚までライナーですっ飛んで激突した。

ウッホ♪ ウッホ♪

ゴリラは嬉しそうにバナナを喰いながら勝利のダンスに興じている。

しかし妙な事に首を飛ばされた店長がフラフラとしながらもまだ倒れない。千鳥足とでも言おうか?タガーナイフを手にゆっくりと此方へと近づいて来る。

ヒヤリと背中に冷たい物が走った。

この店全員の眼が俺に集中しているのだ。

騒いでいた常連客、従業員、ゴリラまでもが無言で俺を見つめている。

「 若者が希望を持てる社会などと言われたりしているようですが意味不明です。何故そうやって社会のせいにするのか全く理解できません。あくまでも私の状況です。社会の環境ではありません。勝手に置き換えないでください!!」

店長は首の無い事を完全に無視してそう叫んだ。

「 俺には友達はいる!でも孤独だった!生身の女に興味が無いワケでは無い!でも孤独だった!孤独だった!孤独だった!孤独だった!孤独だった!孤独だった!孤独だった!孤独だった!孤独だった!」

店長は首が無いのを無視して涙を流している。

「 孤独だった!!!!」

耳元でその叫びを聞いた次の瞬間、ヌラリと光るタガーナイフが俺の頭上へと振り下ろされた。







「 おい!出ねえぞこの台!」

ガン! ガン!

その声と音に反応して俺は目を開けた。

隣りではスキンヘッドにサングラスという出で立ちの男が、煙たそうに煙草を咥えながら怒鳴っている。

夢だったのか?

確変を知らせるランプが点いた。

ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ…

「 よしよし、そういえば最近寝てなかったからな!寝不足の時の俺は調子がいいんだ♪♪ 」

隣りで此方を睨むゴリラを横目に、玉を空箱に滑らせる。

ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ…

箱が一杯になり従業員が新しい箱を俺に差し出す。その中には血のついたタガーナイフが。

「 俺は、孤独だったんだよ… 」

目の前の硝子窓には首の無い男が俺をジッと見降ろしていた。

【了】
12/16 14:28
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▼[51]ロビンM

黒い因縁

これは俺が毎日の様にナンパに明け暮れていた十代の頃の話だ。

その夜、いつもの様に舎弟の龍と共に神戸は三○宮の街まで繰り出していた。とっておきのギャグで見事酔っ払いの美女二人をゲットした俺達は、彼女達の提案で明○市にある心霊スポットまでドライブがてら向かう事にした。

しかし最初はウザいぐらいテンションも高くノリの良かった彼女達だったが、車を走らせて二十分程すると口数が減り出し、終いには後部座席で寝息を立て始めた。

困った事に俺も龍も心霊スポットの詳しい場所を知らない。

もう面倒くせぇからこのままひと気のない場所まで連れてってヤッちまうかと悪巧みをしていると、後ろからか細い声がした。

「 次の信号を右… 」

なんだ起きてやがったのかと思いながら(内心ガッカリ) 、言われた通りに次の信号を右折した。

緩い傾斜が続き、車は新興住宅地を抜けた。

なんか雰囲気が出て来た。

街灯も疎らになり、両サイドを山に囲まれた暗い道路が延々と続いている。後部座席からはやはり二人のスースーとした寝息が聞こえてくる。

「 フェンスを越えたら最初の角を左に曲がって…」

また背後から声がした。

言われた通りに左折する。

「 あ、兄貴!」

助手席の龍が後ろを見ながら震える声で肩を揺すってきた。なんだよとルームミラーを覗くと後部座席には誰も乗っていない。

車を急停止させ、改めて後ろを確認するがやはり誰も乗っていない。更に異様なのは車内は真っ暗な筈なのに空気がやたら濁っているのが分かる。まるで中で何かを焚いたかのようだ。

恐怖の余り俺達は声も出さずにゼスチャーでこれからどうするかを話し合った。そしてとりあえず逃げるかと意見が合った時龍が俺の背後を指さした。

ゴン!ゴン!

運転席の窓をノックされ振り向くとあの二人が外に立っていた。二人とも顔を硝子に近付けて降りて来いと合図をしている。血色のない真っ白な顔だ。今思えばもうこの時から俺達も正常では無かったと思う。

言われるがままに車を降りるとまたもや二人がいない。消えた。

周りは深い闇と濃霧に包まれており数m先も見えない。しかし随分先の方に二人の歩く後ろ姿が見えた。何故か彼女達の周りだけがボンヤリと鈍く光っている。

俺達は彼女達の後を追った。

フェンスが破れた穴を抜け、獣道に近い藪漕ぎだらけの歩きにくい道を進むと大きな沼に出た。元々大きな沼なのか?今は減水しているようだが既にこの時俺達は膝まで泥水に浸かってしまっていた。

沼の真ん中辺りにボォっと揺らめく人魂が二つ、青みを帯びた炎と共に浮いている。

勿論、頭の中ではこれ以上行ってはならないという危険信号が出ているが、足は俺達の思いを他所に一歩また一歩と沼の中へと進もうとする。

暫くすると目が慣れて来たのか人魂の中に彼女達の笑っている顔が見えた。目を釣り上げ爆笑している。なんか狐みたいな顔だ。

腰まで泥に浸かった所で急に足が前に進まなくなった。足元に何かが引っ掛かっているようだ。

右手を水の中に突っ込みそれを引き上げてみると、分厚い布の様な物が出て来た。泥に塗れていてそれが何なのかよく分からないが兎に角めちゃくちゃ重い。

龍と二人掛かりでバサバサと泥を振り落とすように振っていると中から白く丸い塊がボロリと転がり落ちてきた。龍が横から慌ててそれを両手で掴む。

白骨。それは誰がどう見ても頭部の人骨だった。

この状況。

俺の脳が人格崩壊の危機を察知したのか頭の中で小田和正氏の「言葉に出来ない」がゆっくりと再生された。龍は恐怖で気が触れたのか手の平の人骨に頬擦りをしている。見た事もないとても優しい顔で…

「 あなた〜にあえ〜て♪ ほんと〜によかぁあった♪ 嬉しくて〜嬉しくて〜言葉にできな〜ぁい♪♪ 」この後の「ラーラーラ♪」は龍と肩を組みながらのコーラスで三十分程リピートで熱唱した。お陰で足がブヨブヨにふやけ、喉をやったのは言うまでもないだろう。

大声で熱唱する事により死人の妖術を解いた俺達は、隙を見て猛ダッシュで愛車(クラウン)へと逃げ帰る事に成功。龍とハイタッチを交わした後、後部座席を見ると美女が二人アイプチにより閉じない瞼をヒクヒクと痙攣させながら気持ち良さそうに爆睡していた。

翌朝、迷ったが龍の握っていた骨を袋に詰めて警察署に持っていった。匿名にしようかとも考えたがガラケーが水没してしまった為と、直ぐに首を突っ込みたがる悲しい性格の所為である。

捜索の結果、骨の正体はある事件に関わり逃亡中だった某○○組織の構成員である事が分かった。両手両足を縛られていたらしいので多分そういう事だろう。

偶然では済まされないこの事件発覚に、俺達は死ぬ程警察に疑われ四ぱちでは済まない程の取り調べと追及と脅しを受けた。関わるんじゃなかったと後悔したが後の祭りだった。

因みに龍は取り調べ中逆ギレして警官を殴り、拳銃を奪って逃げようとして捕まり逮捕された。理由は一度本物を撃って見たかったらしい。馬鹿だ。

容疑が晴れた俺は風呂に浸かりながら考えていた。

俺達はこの世成らざる者、あの死体にあの場所に呼ばれた?では何故関係のない俺達を現場に呼び寄せたのか?何故俺達が選ばれたのか?何か理由がある筈だ。

ぴちゃん

天井から雫が一つ鼻の上に落ちてきた。

するとその瞬間、俺の頭の中に見た事もない映像が次々と流れ出した。

だだっ広い駐車場でボコボコにリンチされている男。裸にされ大勢の人間にひたすら殴る蹴るを繰り返されている。後ろ手に縛られながら苦しみもがいている。

やがて男は動かなくなり、毛布の様な物で簀巻きにされて車のトランクに押し込められた。

んっ?この車は見た事あるな…もしやクラウン?なんか色も型も俺の車に酷似しているんだけど。車番も同じだ。あれ?

車は山道をひた走り、見覚えのある破れたフェンスの横で停車した。

「 ………… 」

後はご想像通り、数人で運び出し沼に沈めてはい終了!…ふぅ…

風呂から上がると、直ぐに車(クラウン)を売ってくれた先輩に連絡を入れた。

『 お掛けになった電話番号は、現在お客様のご都合によりお繋ぎ出来ません… お掛けになった電話番号は、現在お客様のご都合… 』

ピッ…

ふ、成る程な…

【了】
12/21 14:09
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▼[52]ロビンM
決着

「いてて、ミシシッピワニに噛まれた傷が疼くわ!」
突然、発した徳井の一言で周りの空気はガラリと一変した。
みると徳井は顔を通常の二倍程に膨らました挙句、胡座をかいて空中浮遊している。
森は万年床の煎餅布団から脱出したいが為に徳井の喧嘩を素直に買う事にした。
「アーモンドクッキー、アーモンドクッキー」
徳井は既に紫色の光を放ちながら高速回転を始めている。森も負けじと特保のコーラを頭からかぶり高速回転を始めた。
新築マンション11階の窓を破り飛び出した二人、もとい二玉は黒い帯状のアスベストを撒き散らしながら着陸に成功した。
良く晴れた心地良い昼下がりに二玉は、引きこもりニートの性か強烈な嫉妬とストレスを感じて目を三回転させた。
目の前の信号が青に変わり、約二万人のリーマン達がもわもわと恐ろしいまでの煙りを焚き上げ、ドヤ顔で煙草を吸いながら物凄い勢いで此方へと向かって来た。
「ケセランパサラン、ケセランパサラン、ビッグバンの端はトップガン!!!」
「歩き煙草だめ!げせぬ!!」
徳井と森は通常の六倍以上に腫れ上がってしまった顔に空気をパンパンに溜め込み、まるで向日葵ハム状態。既にいつでも発射OKの状態にあった。

しかし意外にも先に動きを見せたのは森だった。「ボンボヤージュ、工藤静香は勝ち組だ!松本伊代は負け組だ!浪漫飛行、浪漫飛行!!」
森は周りの大気を揺るがす超真空状態を作り込み、超重量にまで収縮した後一気に爆発した。そして0、8秒後には二万人のリーマンの内の半分が一瞬で消し飛んでいた。
「前世は金熊、来世は脳リミッター鯨!!年貢と書いてクソと読む!ツッタララー、ツッタララー」
森は自分の成功を祝って自ら優雅な「舞」を踊り始めた。
徳井はスタートに躓き、事務所から出てきたヤクザにボコられている。
森は徳井を鼻で笑いながらも一緒に消し飛ばした足場解体中の鳶工の冥福を、落ちていたシケモクを吸いながらただ静かに祈るのだった。

終わり
06/01 15:26
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