MH小説・日記
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◆[3]無名
「ぜっ、はっ、あっ」
本日の寝覚め。
最悪。
呼吸は断続的に途切れて、視界は点滅してストロボじみている。
身体は汗にまみれてべたつく寝間着の感触が気持ち悪い。
「また“あの夢”か」
くそ、と吐き捨てながらふと窓を見た。
そこには数羽の小鳥がちょこんとしながらチチチと囀っていた。
それを見て少年は何を思ったのか起き上がるやいなや台所に向かって歩いていった。
憂鬱とした気分を晴らすために包丁でも取りに行ったのだろうか?
昨日の凶行を見てそう思うだろうが、事実は違った。
「ほら、食べな」
少年はその掌にパンの耳を乗せて小鳥達に差し出した。
チュンチュンと言いながら小鳥達はぴょんぴょん跳ねながら少年の掌に飛び乗りパンの耳を啄み始める。
「パンの耳くらいならいつでもやるからまた来な」
少年は愛らしくパンを啄む小鳥達を見て微笑みながらそう呟いた。
その言葉が伝わったのか、小鳥達は食べ終わるとまたぴょんぴょん跳ねながら窓まで行くと軽快に空へ飛んで青空に消えていった。
それを見届けたアルティアは壁に掛けてあったコートに手を伸ばし、寝間着を脱ぎボディスーツを着た後で紅蓮の衣を纏った。
パチン、パチンと漆黒の剣を包容した鞘を肩から下げるための留め具を止める音がする。
「さて、行くか」
そのまま少年は部屋を出た。
部屋を出た先に広がっていた世界はどこまでも黒い建物の腹内だった。
所々赤い装飾がされていて、どこまでも悪趣味なゴシック建築は設計者のセンスを疑う。
だが、最初はアルティアもそんな異常な世界を不快に思っていたが、これはこれでアリだな、と思えてきた。
要するに住めば都、ローマではローマ人のする様にせよ、ということだ。
「いや、何か後者は違うな。あとローマってどこだ?」
などと溢しながらすたすたと、やはり黒地に赤い模様の廊下を歩いていった。
09/16 07:49
[N08A3]
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